2018 Fiscal Year Research-status Report
悪性リンパ腫の臓器指向性に関わる腫瘍細胞と微小環境の相互作用の解明と新規治療開発
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17K09922
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
島田 和之 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (50631503)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 悪性リンパ腫 / エクソソーム / がん関連線維芽細胞 / 臓器指向性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度においては、平成29年度に引き続き腫瘍細胞と微小環境との相互作用の解明に取り組んだ。臓器指向性を規定するメカニズムの同定については、中枢神経に病変を形成する腫瘍に焦点を当てて検討を行った。前年度までに行ったPDXモデルより得られた同一検体に由来する中枢神経病変と腹部腫瘤病変の比較において、発現の差異を認めた複数の遺伝子について、その生物学的意義をPDXモデル検体及び患者検体を用いて分子病理学的に検討を加えた。複数の候補遺伝子について検討を行い、定量PCR法および患者検体における免疫染色にてその発現の意義を検証することが出来た遺伝子を中枢神経病変形成に関連する候補遺伝子とした。現在当該遺伝子の強制発現株およびゲノム編集技術を用いたノックダウン株を作成に取り組んでいる。 並行して腫瘍細胞と微小環境構成細胞との相互作用についても検討を進めた。悪性リンパ腫患者のリンパ節生検検体から単離したがん関連線維芽細胞(CAF)より分泌される分泌小胞のうち、エクソソームに焦点を当て検討を進めた。前年度までにエクソソームが腫瘍細胞の生存を支持し、CAFからのエクソソームの分泌量が生存支持効果に関与することを明らかにしていたが、平成30年度においては、エクソソームにより抗がん剤耐性が誘導されること、耐性誘導については、エクソソームにより、抗がん剤取り込みに必要なトランスポータータンパクの発現が低下することが関連していることを明らかにした。さらにエクソソームにより薬剤感受性が変化する薬剤のスクリーニングに着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
体内の各臓器に病変を形成する腫瘍細胞の細胞遺伝学的特徴の解明および生着を規定する因子の同定については、中枢神経病変に焦点を当て、中枢神経病変と腹部腫瘤病変の全RNA配列解析より、発現差を認めた遺伝子を抽出した。複数の候補遺伝子について、定量PCR法および免疫染色を用いて、その意義を検討し、PDXモデル標本および患者標本の検討から、遺伝子Xを候補遺伝子として同定した。現在、当該遺伝子の関連を確認すべく精力的に検討を進めている。PDXモデルより得られた患者細胞については、通常の培養系では培養が困難であったが3次元培養系の応用により、効率的に検討を進めることが出来るようになってきている。 腫瘍細胞と微小環境構成細胞との相互作用の解明については、がん関連線維芽細胞(CAF)より分泌されるエクソソームに着目して検討を進めている。CAFの生存支持作用については、患者毎に差異が認められ、各々のCAFから分泌されるエクソソームの分泌量の多寡のみならず、エクソソームに含まれるRNA量にも差異が認められることを明らかにしている。エクソソーム分泌タンパクであるRab27bをノックダウンすることによって、腫瘍の生存支持効果が阻害されることを明らかにし、さらにエクソソームの抗がん剤耐性獲得に関連しており、抗がん剤のトランスポータータンパクの発現低下をもたらし、実際に抗がん剤の細胞内濃度が減少することを明らかにしている。さらに腫瘍細胞と微小環境との相互作用を破綻させる薬剤の探索については、CAFより分泌されるエクソソームにより薬剤感受性が変化する薬剤を薬剤ライブラリーからスクリーニングしている。これらのことから概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度においては、中枢神経に病変を形成する腫瘍細胞の特徴を明らかにするために、同定した候補遺伝子の病態への関連について検討を進める。当該遺伝子の強制発現株、ノックダウン株を作成し、in vitroおよびin vivoにおける検討を進めて行く。CAFより分泌されるエクソソームについては、in vivoモデルでの検証を進めると共に、患者検体での臨床的意義の検討を進めていく。さらに、薬剤ライブラリーからのスクリーニングにより、エクソソームを標的とする薬剤開発へと繋げる知見を明らかにするとともに、探索された薬剤の作用機序よりエクソソームの作用についても明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
全体の研究の進捗が概ね順調であるが、一部の研究内容については、更なる研究成果のレベルアップを図るために、成果発表の時期を遅らせている。そのため次年度使用額が発生した。成果発表のための旅費・英文校正費などに充当する予定である。
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