2018 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫性造血不全におけるdel(13q)クローン活性化機序の解明
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17K09947
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
石山 謙 金沢大学, 附属病院, 講師 (60377380)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 自己免疫性造血不全 / 13番染色体長腕の部分欠失(del(13q)) / OLFM4 / TGF-β |
Outline of Annual Research Achievements |
自己免疫性造血不全において、13番染色体長腕の部分欠失(del(13q))を持つ造血幹細胞が優先的に活性化されるメカニズムを明らかにするため、del(13q)陽性造血不全の共通欠失領域に位置するOLFM4変異の関与を検討した。CRISPR-Cas9系によりOLFM4をノックアウト(KO)したK562細胞およびTF-1細胞は、いずれも赤血球分化を示した。これは、TGF-βのシグナリングを抑制する「TGF-βのco-receptor」CD109をKOしたTF-1と同様の現象であった。OLFM4は、大腸がん細胞において、TGF-βのシグナリングを抑制していることが報告されている。牛胎児血清10%を含むRPMI1640中には、造血前駆細胞を赤血球に分化させる低濃度のTGF-βが含まれることから、OLFM4は、造血前駆細胞においてもTGF-βのシグナリングを抑制しており、OLFM4がKOされたK562細胞やTF-1細胞では、TGF-βシグナリングが促進される結果、赤血球分化が誘導されることが示唆された。Primary細胞におけるOLFM4の役割を明らかにするため、再生不良性貧血患者の単球から作製したiPS細胞から、OP9細胞とWEHI3B細胞の培養上清を用いてCD34陽性細胞を誘導したところ、誘導されたCD34陽性細胞はOLMF4を強発現していた。OLFM4の発現低下が、TGF-βによるTF-1細胞およびCD34陽性細胞にどのような影響を及ぼしているかを明らかにするため、OLFM4をノックダウンするsiRNAを準備している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、CRISPR-Cas9系を用いてGM-CSF依存性骨髄性白血病細胞株TF-1のOLFM4 KO細胞の作製に成功し、このKO細胞では、野生型細胞に比べてグリコフォリン発現の強く、鉄顆粒の出現・赤芽球様の形態変化などがみられたことから、OLFM4はTF-1細胞の赤血球分化を抑制していることが示唆された。TF-1細胞における同様の赤血球分化は、PIGA変異を誘導したTF-1細胞や、GPI-アンカー膜蛋白でTGF-βのコレセプターco-receptorであるCD109をノックアウトしたTF-1細胞でも観察された。CD109はTGF-βのシグナリングを抑制する機能を持っており、OLFM4も、TGF-βのシグナリングを抑制することが知られていることから、TF-1細胞の赤血球分化誘導は、牛胎児血清を含む培養液中のTGF-βを介したものであることが示唆された。Primaryな造血幹前駆細胞におけるOLFM4の発現を確認するため、ヒト骨髄や臍帯血のCD34陽性細胞における発現解析を試みたが、十分な細胞が得られなかったため、確認が困難であった。このため、再生不良性貧血血患者の単球から作製したiPS細胞をCD34陽性細胞に分化させ、抗OLFM4抗体で細胞内の発現を調べたところ、OLFM4の強発現が確認された。 PIGA-KO TF-1細胞、OLFM4-KO TF-1細胞、野生型TF-1細胞の3群間で、GM-CSFによるアクチン重合の誘導をファロイジン染色とリン酸化MYPT-1・MLC2の定量による評価を試みたが、PIGA-KO TF-1細胞、OLFM4-KO TF-1細胞は既に赤血球分化を来していることから野生型細胞との比較は困難であった。このため、TF-1細胞におけるOLFM4発現を一過性に抑制するsiRNAを準備している。
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Strategy for Future Research Activity |
OLFM4がTGF-βの細胞内シグナリングに関与していることが示唆されたため、siRNAを用いてTF-1細胞およびヒトCD34陽性細胞のOLFM4発現を抑制することにより、TGF-βによる造血幹細胞の赤血球分化誘導が促進されるか否かを検証する。また、iPS細胞由来のCD34陽性細胞(iCD34陽性細胞)を免疫不全マウスの骨髄内に投与することにより、OLFM4発現を低下させたiCD34陽性細胞と野生型iCD34陽性細胞との間で生着率に差がみられるかを明らかにする。
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