2017 Fiscal Year Research-status Report
新規キメラ型抗原受容体遺伝子を用いる成人T細胞白血病に対する免疫療法
Project/Area Number |
17K09957
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
谷本 一史 愛媛大学, 医学系研究科, 講師 (40724779)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 弘 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (20398291)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 移植・再生医療 / 癌 / 免疫学 |
Outline of Annual Research Achievements |
治療抵抗性成人T細胞白血病(ATL)に対する臨床的に有効な新規キメラ型抗原受容体遺伝子を用いる細胞免疫療法の開発を進めている。第一に、我々は臨床的に利用可能な全ての癌治療用モノクローナル抗体を抗原認識部位に利用できる万能型CAR-T細胞を開発しATL治療に応用できることを論文報告した。さらに、臨床効果の向上を目的に、輸注後生着期間の延長を目指して細胞内ドメインに改良を加えてCAR-T細胞の細胞分裂活性維持期間の延長に成功した。現在、動物実験を準備中である。 並行して、ATL細胞にその発現が報告されているがん・精巣抗原NY-ESO-1をHLA-A2拘束性に認識する新たなCAR-T細胞を開発した。ATL患者細胞でのNY-ESO-1発現程度の確認と並行して、このNY-ESO-1/HLA-A2特異的CAR-T細胞機能のvalidationを、NY-ESO-1とHLA-A2遺伝子を導入したK562白血病細胞等を用いて、in vitroとin vivoで進めている。合わせて、NY-ESO-1/HLA-A2複合体とCD3eを架橋認識してT細胞を標的特異的に活性化する新たな二重特異性抗体を作製して、CAR-T細胞との抗腫瘍効果の比較検討を進めている。 一方で、分担研究者等はATLに対する抗CCR4抗体療法の長期予後を検討して報告した他、ATLに対する細胞免疫療法のプロトタイプである同種造血幹細胞移植の臨床的有用性について国内レジストリーデータベースを用いて解析して報告するとともに、ATL細胞の腫瘍免疫抑制機序とされている制御性T細胞様活性に関して検討報告した。また、ATLもその一つである末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)の発症に関連する遺伝子変異を同定し、PTCLの抗がん剤治療抵抗性獲得機序の一つを検討して報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、ATL治療に用いられている抗CCR4抗体を抗原認識に用いる抗CCR4-CAR-T細胞として、レンチウイルスベクターを用いてFcgRIIIa-CD3zキメラ遺伝子を導入したCD16zeta-CAR-T細胞を開発しているが、細胞内ドメインがCD3z単独の第一世代CAR-T細胞ではATLA細胞移植免疫不全マウスを用いた治療実験において生着期間が十分とは言えなかった。そこで、細胞内ドメインを改良してin vitroでの抗原認識後の細胞分裂維持期間の延長に成功した。現在、ATL細胞移植免疫不全マウス(NOGマウス)を用いた治療実験によるin vivoでの検討を計画している。 並行して、ATL細胞にもその発現が報告されているがん精巣抗原NY-ESO-1をT細胞受容体(TCR)同様にHLA-A2拘束性に認識する新たなCAR-T細胞を開発した。レトロウイルスベクターを用いて導入するこのCAR遺伝子は、NY-ESO-1/HLA-A2複合体特異的モノクローナル抗体(3M4E5)の軽鎖、重鎖の超可変領域遺伝子を利用している。このCAR-T細胞は、in vitroにおいてNY-ESO-1遺伝子とHLA-A2遺伝子を導入した白血病細胞K562を認識して効果的に殺傷した。その希少性からHLA-A2陽性かつNY-ESO-1発現が強いATL患者細胞が得難いため、NY-ESO-1陽性多発性骨髄腫(MM)細胞株を用いて機能評価を行っている。In vitroに加えて、現在、in vivo imagingの系を用いてルシフェラーゼ遺伝子導入MM細胞株を移植したNOGマウスの治療実験を行っている。さらに、患者末梢血中のCD4、CD8+T細胞に生体内で抗原特異的反応性を付与出来るNY-ESO-1/HLA-A2複合体特異的二重特異性抗体も合わせて作成し、その有効性を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、分担研究者等は同種造血幹細胞移植後再発ATLを対象に、健常者ドナーリンパ球にNY-ESO-1/HLA-A2特異的TCR遺伝子を導入したTCR-T細胞を用いる医師主導第1相治験を進めている。我々が開発を進めているNY-ESO-1/HLA-A2特異的CAR-T細胞とCD3を架橋刺激する二重特異性抗体の抗ATL効果を検討する際の重要な臨床データが得られると考えている。 我々は、平成30年度も、HLA-A2陽性かつNY-ESO-1高発現のATL患者リクルートを進めて患者検体での検討を進める。一方で、HLA-A2陽性ATL細胞株は1種類しか無くそのNY-ESO-1発現も決して強くないことから、様々な既存のATL細胞株にHLA-A2/NY-ESO-1遺伝子を導入してモデル細胞株を作製し実験の進行を早める。現在、我々は、MM細胞を用いてこのCAR-T細胞の詳細な機能評価を行い実験系の組み立てに関して情報を得ている。これらの情報と遺伝子改変ATL細胞を用いて、CD16z-CAR-T細胞とNY-ESO-1/HLA-2-CAR-T細胞の抗腫瘍効果を詳細に検討する。あわせてNY-ESO-1/HLA-A2複合体とCD3eを架橋刺激するT細胞活性化型二重特異性抗体の有用性も検討する。これらの治療戦略は、いずれもエフェクターにT細胞を利用する。そこで、ATL細胞自体の制御性T細胞様活性の影響や、さらには約3割の症例でATL細胞が免疫チェックポイント分子PD-L1を発現している事を我々は報告しているが、免疫チェックポイント阻害剤との併用効果の検討を進める。これらエフェクター機能の機能評価を進めながら、in vivoでのエフェクター機能の発揮に重要なメモリー細胞形質の獲得をこれらCAR-T細胞に効果的に誘導できる培養条件の検討を合わせて進めて行く。
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Causes of Carryover |
本年度予定していたベクターの作成、遺伝子導入細胞の作成が遅延したため、来年度も研究計画の内容に従って、ベクター開発、細胞培養関連、遺伝子導入試薬、NOGマウス購入と飼育、in vivo imaging実験の費用に研究費を充てる。また、現在得られた結果を、学会等で成果を発表する旅費や国際雑誌に論文発表する経費等にその一部を充てる。
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[Presentation] Development of T-cell therapy by exploiting modified antibodies specific for A2/NY-ESO-1 for refractory myeloma.2017
Author(s)
Maruta, M., Ochi, T., Tanimoto, K., Azuma, T., Fujiwara, H., Yasukawa, M.
Organizer
The 59th American Society of Hematology Annual Meeting and Exposition
Int'l Joint Research
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[Presentation] Development of immunotherapy for myeloma utilizing T cells redirected with modified antibodies specific for NY-ESO-1.2017
Author(s)
Ochi, T., Maruta, M., Tanimoto, K., Azuma, T., Fujiwara, H., Yasukawa M.
Organizer
The 36th Sapporo International Cancer Symposium
Int'l Joint Research
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[Presentation] 両側乳房への孤立性病変にて再発した急性リンパ性白血病の一例2017
Author(s)
丸田雅樹, 谷本一史, 東太地, 朝井洋晶, 池田祐一, 越智俊元, 竹内一人, 山之内純, 藤原弘, 薬師神芳洋, 羽藤高明, 安川正貴
Organizer
第56回日本血液学会 中国四国地方会
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[Presentation] 大量の乳び胸水を契機に診断された節性濾胞辺縁帯リンパ腫の一例2017
Author(s)
谷本一史, 東太地, 朝井洋晶, 池田祐一, 越智俊元, 竹内一人,山之内純, 薬師神芳洋, 藤原弘, 羽藤高明, 安川正貴
Organizer
第79回日本血液学会学術集会
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