2017 Fiscal Year Research-status Report
炎症性骨破壊におけるアンジオテンシンII受容体の役割の解明
Project/Area Number |
17K09991
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
守田 吉孝 川崎医科大学, 医学部, 教授 (50346441)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向井 知之 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (00454421)
佐藤 稔 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (70449891)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 関節リウマチ / アンジオテンシンII / 関節炎モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
アンジオテンシンII は血圧調節因子として広く知られているが、骨代謝に対して生理的役割を有していることが近年明らかとなっている。本研究は、骨破壊性関節炎を自然発症するヒトTNFトランスジェニックマウスを用い、炎症性あるいはTNF誘導性の骨破壊・骨量減少におけるアンジオテンシンII及びその受容体の役割を解析することを目的としている。 まず、骨髄由来マクロファージと新生児マウス頭蓋骨由来骨芽細胞の共培養下にて、アンジオテンシンII刺激後の破骨細胞分化を評価した。その結果、in vitroにおけるTRAP陽性の破骨細胞形成はアンジオテンシンII存在下で有意に増加した。骨芽細胞非存在下ではアンジオテンシンIIによる破骨細胞分化の亢進はみられなかった。すなわち、アンジオテンシンIIは骨芽細胞などの間葉系細胞を介して、破骨細胞分化に寄与し得ることが確認された。 つぎに、ヒトTNFトランスジェニックマウスに浸透圧ポンプを用いてアンジオテンシンIIを4週間持続投与した。アンジオテンシンIIの投与は関節炎スコアに影響を与えず、組織学的にも炎症細胞浸潤の程度に影響はなかった。しかし、マイクロCT解析では距骨の骨びらんは、アンジオテンシンII非投与群と比較し、アンジオテンシンII投与群で有意に増強した。さらに、組織学的にも距骨の骨びらんの増悪を認め、また距骨周囲の破骨細胞数の増加も観察された。これらの知見はTNF過剰あるいは全身性炎症といった病的状況において、アンジオテンシンIIが骨破壊を増強させることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(A) ヒトTNFトランスジェニックマウスマウスの骨破壊におけるアンジオテンシンII及びその受容体の役割:現在までにアンジオテンシンIIを投与されたヒトTNFトランスジェニックマウスの骨破壊の程度をマイクロCT及び組織学的に定量評価し、アンジオテンシンIIはマウスの骨破壊を増強させていることを明らかにした。さらに、ヒトTNFトランスジェニックマウスとアンジオテンシンIIタイプ1受容体欠損マウスの交配を行い、その骨破壊の程度の解析を開始している。 (B) In vitroの破骨細胞分化における滑膜線維芽細胞とアンジオテンシンIIの役割:関節炎モデルの破骨細胞分化では、滑膜線維芽細胞がRANKL発現細胞として重要であることが明らかにされている。そこで、アンジオテンシンIIは滑膜線維芽細胞を介して破骨細胞分化に寄与しているという仮説のもと、マウスの膝関節より滑膜線維芽細胞を分離し、RANKL及びそのデコイ受容体であるOPGの発現に対するアンジオテンシンIIの影響を現在解析している。 (C) 関節炎マウスの関節病変局所におけるレニン・アンジオテンシン関連蛋白発現:関節炎マウスの滑膜および関節組織から蛋白およびRNAを抽出し、アンジオテンシンII受容体の発現を検討したところ、アンジオテンシンIIタイプ1受容体及びタイプ2受容体の発現の亢進を確認した。 (D) 関節炎マウスの骨破壊に対するアンジオテンシンII受容体阻害薬の効果検討:ヒトTNFトランスジェニックマウスマウスにアンジオテンシンIIタイプ1受容体阻害薬、及びタイプ2受容体阻害薬の関節炎マウスの骨破壊に与える影響を検討すべく、薬剤の投与開始を始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
関節炎マウスを中心とした解析を順調に遂行できており、今後、薬剤投与研究とin vitro解析を進めていく予定である。 (A) ヒトTNFトランスジェニックマウスマウスの骨破壊におけるアンジオテンシンII及びその受容体の役割:ヒトTNFトランスジェニックマウスに、アンジオテンシンIIとアンジオテンシンIIタイプ1受容体阻害薬(Losartan)あるいはタイプ2受容体阻害薬(PD123319)の投与を行い、アンジオテンシンIIによる骨破壊増強における責任受容体を明らかにする。また、アンジオテンシンIIタイプ2受容体アゴニストの投与実験も行う。ヒトTNFトランスジェニックマウスとアンジオテンシンIIタイプ1あるいはタイプ2受容体受容体欠損マウスの交配を行い、その骨破壊の程度も解析する。 (B) In vitroの破骨細胞分化における滑膜線維芽細胞とアンジオテンシンIIの役割:滑膜線維芽細胞のRANKL及びそのデコイ受容体であるOPGの発現に対するアンジオテンシンIIの影響を解析する。また、骨髄由来マクロファージと滑膜線維芽細胞の共培養下にて、アンジオテンシンII刺激後の破骨細胞分化を評価する。 (C) 関節炎マウスの関節病変局所におけるレニン・アンジオテンシン関連蛋白発現:関節炎マウスの滑膜および関節組織におけるレニン・アンジオテンシン関連蛋白(アンジオテンシノーゲン、レニン、ACE等)の発現の解析を進める。関節局所のACE活性も測定する。 (D) 関節炎マウスの骨破壊に対するアンジオテンシンII受容体阻害薬の効果検討:ヒトTNFトランスジェニックマウスマウスにアンジオテンシンIIタイプ1受容体阻害薬(Losartan)、及びタイプ2受容体阻害薬(PD123319)の投与を行い、薬剤による受容体阻害が関節炎マウスの骨破壊に与える影響を検討する。
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Causes of Carryover |
物品費が当初の見込みと異なっていたため、若干の未使用額が生じた。未使用額は次年度の物品費の経費に充てることとしたい。
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