2017 Fiscal Year Research-status Report
炎症性筋疾患におけるIL-21誘導性GM-CSF産生γδT細胞の役割の解明
Project/Area Number |
17K09995
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
須藤 明 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (50447306)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 浩太郎 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (90554634)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | IL-21 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己免疫疾患の発症には、免疫寛容の破綻による自己反応性T細胞の活性化が関与する。自己免疫応答には、IL-17,IL-21,GM-CSFを産生し自己免疫疾患を惹起するTh17細胞と抑制性に機能する制御性T細胞との分化バランスが深く関与しており、IL-21はTh17細胞の自己増殖因子として機能し、自己免疫疾患の増悪に関与する。IL-21は、濾胞ヘルパーT細胞からも産生され、B細胞の形質細胞への分化、自己抗体の産生を誘導するとともに、CD8陽性T細胞にも直接作用し、細胞傷害性の増強に関与している。本研究者は炎症性筋疾患患者と健常者の血清IL-21濃度を測定し、炎症性筋疾患患者の血清IL-21濃度が、健常者と比して有意に上昇していることを見出した。しかしながら、IL-21の自己免疫性筋炎の発症における役割はいまだ不明であった。そこで本研究者は実験的自己免疫性筋炎の発症におけるIL-21の役割を解析した。その結果、IL-21欠損マウスは野生型マウスに比して筋力低下が有意に改善することを見出した。筋肉への浸潤細胞の解析では、CD11b陽性の骨髄球系細胞および好中球の筋肉への浸潤がIL-21欠損マウスで有意に低下しており、炎症性サイトカインの網羅的な解析にて、GM-CSFの産生がIL-21欠損マウスで有意に低下していた。さらに、GM-CSFの中和抗体を投与することにより、CD11b陽性の骨髄球系細胞および好中球の筋肉への浸潤が抑制され実験的自己免疫性筋炎の発症が抑制されることを明らかにした。一方、実験的自己免疫性筋炎発症マウスの所属リンパ節および筋肉の主要GM-CSF産生細胞はγδT細胞であり、TCRδ欠損マウスでは筋炎の発症が抑制されることを見出した。さらにγδT細胞のTCRレパトワの解析にて、Vγ4陽性Vδ4陽性のγδT細胞が筋肉中に浸潤していることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は研究計画1.筋炎モデルにおけるIL-21-γδT細胞-GM-CSF axisの役割を予定していたが、下記に示すように概ね順調に達成している。 1)実験的自己免疫性筋炎におけるIL-21の役割の解明:本研究ではIL-21欠損マウス及び野生型マウスに実験的自己免疫性筋炎を誘導し、筋力評価、下肢近位筋の組織学的スコア、筋肉への炎症細胞浸潤と所属リンパ節のT細胞分画とサイトカイン産生を解析した。本研究者はIL-21欠損マウスでは筋力低下が弱く、筋内のCD11b陽性細胞の浸潤とGM-CSF産生が有意に低下していることを見出した。さらに主要なGM-CSF産生細胞はγδT細胞であり、TCRδ欠損マウスでは筋炎の発症が抑制されること、特定のTCRレパトワをもつγδT細胞が筋内でGM-CSFを産生していること、IL-21欠損マウスではGM-CSF産生 γδT細胞の筋内への浸潤が低下していることを見出した。 2)実験的自己免疫性筋炎におけるγδT細胞の役割の解明:上記研究計画1.1)にて、実験的自己免疫性筋炎における主要なGM-CSF産生細胞がγδ T 細胞であることと、筋内に特定のTCRレパトワをもつγδT細胞が浸潤していること、TCRδ欠損マウスでは筋炎の発症が抑制されることを見出した。 3) 実験的自己免疫性筋炎におけるGM-CSFの役割の解明:実験的自己免疫性筋炎をマウスに誘導する際にGM-CSFの中和抗体を投与し、筋炎の発症に対する影響を上記研究計画1.1)と同様の方法で解析し、GM-CSFの中和により筋炎の発症が抑制されることを見出した。 4) IL-21によるGM-CSF産生γδT細胞の誘導機構の解明:脾臓や皮膚より単離したγδT細胞をIL-21で刺激することにより、IL-21がγδT細胞から直接GM-CSF産生を誘導することを明らかにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画として以下の研究計画2.GM-CSF産生γδT細胞の筋集積機構の解析および、研究計画3.GM-CSF産生γδT細胞におけるGM-CSF産生機構の解析を予定している。 研究計画2.GM-CSF産生γδT細胞の筋集積機構の解析: 実験的自己免疫性筋炎を誘導したマウスの筋内と所属リンパ節のGM-CSF産生γδT細胞、及びコントロールとして脾臓と皮膚のγδT細胞を単離し、RNAシーケンスにて発現遺伝子を網羅的に解析する。ケモカイン受容体の発現を比較し、筋内のGM-CSF産生γδT細胞に特異的に高発現しているケモカイン受容体を同定する。また、同定したケモカイン受容体、或いはそのリガンド(ケモカイン)に対する中和抗体を自己免疫性筋炎を誘導する際に投与し、その効果を評価する。 研究計画3.GM-CSF産生γδT細胞におけるGM-CSF産生機構の解析:研究計画2で行うRNAシーケンスのデータより、筋内、及び所属リンパ節のGM-CSF産生γδT細胞に特異的に発現する転写因子を網羅的に同定する。γδT細胞をIL-21で刺激した際に発現誘導される転写因子の網羅的解析結果とあわせ、GM-CSF産生誘導の候補転写因子を抽出する。さらに候補転写因子の発現レトロウィルスベクターとノックダウンレトロウィルスベクターを作成し、CD4陽性T細胞およびγδT細胞に発現させ、GM-CSF産生を細胞内染色にて評価する。また候補転写因子の遺伝子欠損マウスを入手、或いはCRISPR-Cas9システムを用いて独自に樹立し、そのマウスのγδT細胞におけるGM-CSF産生能を検討する。他方クロマチン免疫沈降法により、候補転写因子のGM-CSF遺伝子座への結合を確認する。
|
Causes of Carryover |
今後の研究の推進方策に示すように、次年度にマウスの購入、中和抗体の購入、及びRNA-シーケンス解析の費用などの出費がかかる予定で、次年度の予算のみではまかないきれないことが想定されるために、今年度予算から次年度に繰越す計画とした。
|
Research Products
(3 results)