2018 Fiscal Year Research-status Report
好中球NETの酸化ミトコンドリアDNAは慢性肉芽腫症の自己免疫性炎症を増悪するか
Project/Area Number |
17K10006
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
竹内 恵美子 北里大学, 医学部, 講師 (00406935)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大津 真 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (30361330)
竹内 康雄 北里大学, 医学部, 教授 (60286359)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 好中球 / 全身性エリテマトーデス / プログラム細胞死 / 慢性肉芽腫症 |
Outline of Annual Research Achievements |
好中球NETosisは抗核抗体の一因でありSLEなどの抗核抗体陽性自己免疫疾患の増悪因子である。NETosisがおこる機序には不明な点が多いが、NOX2の活性化による活性酸素種(ROS)の産生がその引き金となると考えられている。本研究課題はNOX2を欠損した慢性肉芽腫症モデルマウス(CGD)とwild type(wt)との比較によってROS産生がNETosisにもたらす影響を検討することを目的とする。 本年度において我々は、NOX2依存的ROS産生とmtROS産生の関連について検討していたが、その結果、CGD好中球ではmtROS産生が通常wtのそれよりも高いレベルにあるが、核タンパクであるsnRNAまたはsnRNP/anti-RNP IgG immunocomplex(RNP-IC)による刺激が加わった場合にはこの関係が逆転しwtで活発にmtROSが産生されることを見出した。さらに、snRNPでwt好中球を刺激する際にアポトーシスを阻害するとNETの放出が著しく亢進するが、CGD好中球ではこの変化がないことを見出した。一般にapoptotic cellは炎症を抑制する作用があると考えられるため、アポトーシスを抑制するとNETosisが亢進するということは、正常固体ではNETosisを起こす刺激があった場合でも一部の好中球にはアポトーシスを起こして過剰な炎症を抑制するシステムがあることが示唆される。CGDではこの調節がうまく作用しないためSLEなどの自己免疫疾患を発症する個体が現れている可能性がある。 また、mtROSはミトコンドリアDNAを酸化するが、酸化DNAはcGAS/STINGを介してIFNを放出して炎症を拡大することが知られている。我々はRNP-IC刺激により好中球がNETを放出する様子をtime lapseで捉えたが、今後はこのシステムにmtROS産生の経時変化を重ねて可視化していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NETosis研究はマウスよりヒトのサンプルで行われることが多く、マウス好中球のNETosis誘導はヒトのそれより難しいことが知られている。しかし、ヒトの好中球を常に同じ状態で実験に用いることは容易ではないため、マウスで確実にNETosisを誘導、解析するシステムを築くことは今後の好中球研究において重要なことである。 前年度において我々は、好中球を刺激する因子の種類、濃度、計測時間、緩衝液の組成などの詳細な条件検討によりマウスの好中球に確実にNETosisを起こさせることに成功し、その様子を動画として採取することも可能にした。また、NETosisの定量法についても蛍光色素を用いて細胞外DNAの経時変化を細かく採取することで様々な比較検討に耐えうるデータを取得する方法を確立した。今後はこれらの組み合わせによりNETosisというeventが何をきっかけにしてどのように進行するのか、慢性肉芽腫症などの免疫不全とどのように関わってくるのかスムースに解析を進められると考えられる。 また、マウス好中球にNETosisをよく誘導する因子として核タンパクsnRNPを我々は見出したが、既報によりsnRNPはB細胞上に発現するCD72のリガンドであり、BCRからのシグナルを抑制することが知られている。現在好中球とsnRNPとの関係に関する報告はないが、我々は、好中球のNOX2を活性化させると通常発現していないCD72が誘導されることを確認しており、今後好中球のCD72がNETosisの誘導または抑制に何らかの働きをしていないか検討してく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は前年度までに、 1.マウスの好中球を用いて確実にNETosisを誘導し蛍光染色で検出できる方法を確立した。2.再現性の高い細胞外DNAの定量法を確立した。3.NETosisが起こる様子をtime lapseで捉え、ミトコンドリアの活性化とDNA放出の前後関係を可視化できるようにした。 今年度はこれらの方法を用いて、 1.NOX2活性化によるROSの産生がsnRNPまたはRNP IC添加時のシグナル伝達においてどこで関わるのか、あるいはNOX2非依存的にNETosisを起こすことができるのか。2.NOX2活性化により産生されるROSとmtROS産生に関連があるか、 3.CD72の発現誘導とNOX2活性及びミトコンドリアの活性化との関連はあるのか、4.アポトーシスなどのほかの制御性細胞死とNETosisとのバランスは抗核抗体陽性の自己免疫疾患の発症および増悪に関連しているのか、 についてさらに検討を重ねる予定である。
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Causes of Carryover |
マウスの好中球を骨髄から分離するため磁気ビーズのisolation kitを用いているが、今年度に生じた差額はこのキット1セット分の値段であり、1回分の実験を次年度に持ち越す程度の使用回数の差である。現在使用しているキットを使いきったところで新しいキットを購入する予定である。
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Research Products
(2 results)