2018 Fiscal Year Research-status Report
ヒト末梢血T細胞トランスクリプトームと腸内細菌叢の生理的・病理的関連検討
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17K10009
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
清水 潤 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (30509964)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 腸内細菌メタゲノミクス / Th17細胞 / 制御性T細胞 / ベーチェット病 / 再発性多発軟骨炎 / 慢性腎臓病 / アルツハイマー病 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の研究の進展によって、腸内細菌の種類や菌遺伝子機能とヒトの健康・疾病との関連が徐々に明らかになってきている。本研究は、腸内細菌メタゲノムデータとヒトリンパ球機能の相関を、リンパ球の遺伝子や蛋白の発現解析を通じて、各種疾患にて検討するものである。具体的には、腸内細菌叢メタゲノミクスのデータ(菌種・菌遺伝子機能)より、過去のビボ・ビトロの研究データに照会する形で末梢血でのT細胞機能を推測し、T細胞の遺伝子・蛋白発現にて確認している。複数疾患にて観察することで、その二者の関連を明確にすることを目標とした。 2018年度のメタゲノムおよびリンパ球機能解析の研究実績の概要は以下の通りである。 指定難病である免疫疾患「再発性多発軟骨炎」における腸内細菌叢メタゲノミクスおよびT細胞機能解析を実施し、いずれも疾患特異的と考えられる変化を発見し、腸内細菌叢代謝物質である短鎖脂肪酸を介した関連を考察した。この結果を欧文にて公表した(PLoS One. 2018; 13: e0203657.)。 さらに、指定難病である免疫疾患「ベーチェット病」において新規解析を実施し、疾患特異的と考えられる腸内細菌遺伝子機能における変化を見出し、欧文にて公表した(Clin Rheumatol. 2019 Jan 9. [Epub ahead of print])。この報告に関しても腸内細菌叢と末梢血T細胞機能の連関に、腸内細菌叢産生の短鎖脂肪酸の重要性を考察している。 過去のデータを併せ考えると、腸管における短鎖脂肪酸の果たす役割は、生理および病理のいずれにおいても大きいものと推察されており、本研究でも確認された形となった。この機序は、例えば神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病)や代謝疾患、腎疾患でも病態形成に関与することが推測されており、本研究の推進方向を示すものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の腸内細菌叢メタゲノミクスおよびリンパ球機能解析は、昨年同様おおむね計画通りに進捗し、欧文にて2公表を終了した。また学会発表も、米国リウマチ学会および日本リウマチ学会等にて実施した。 現在、ベーチェット病および再発性多発軟骨炎における新規患者のリクルートを実施しており、逐次解析を実施している。 ベーチェット病と再発性多発軟骨炎は近縁疾患とも考えられているが、腸内細菌叢メタゲノミクスとT細胞機能解析の結果は対極をなしていた。仮にマウス腸内細菌叢をこの2疾患の腸内細菌叢にてヒト化できれば、そのマウスの解析にて疾患モデルの作成を通じて、T細胞機能の病理的なスペクトラムを観察し得る可能性があると考えている。現在この仮説を証明すべく、動物実験を計画している。 再発性多発軟骨炎においては現在、T細胞の遺伝子発現と血中サイトカイン濃度、および疾患のバイオマーカーと考えられている「血清MMP-3」と「抗タイプIIコラーゲン抗体」の連関を検索している。同疾患における、T細胞機能の病態における役割を新たに明らかにして、腸内細菌叢との関連を再考察する。次項にて詳述するが、本研究組織では血清MMP-3と抗タイプIIコラーゲン抗体が再発性多発軟骨炎の異なった病理に関与していることを明らかにしており(Medicine. 2018; 97: e12837)、その結果は斬新なデータとなるものと考えている。まとまり次第公表を予定する。 T細胞におけるエピゲノムの探索であるが、すでに得られたデータより情報収集のみである程度の考察を実施し得る可能性が出てきていると考えている。最新T細胞機能研究の獲得を維持する。
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Strategy for Future Research Activity |
①T細胞機能と疾患バイオマーカーとの関連検討の実施 前述したが、現在再発性多発軟骨炎においてはT細胞機能と、いわゆる疾患バイオマーカーとの比較を試みている。今後はこの解析を、他疾患へと、またメタゲノミクスの結果を含めたものへと拡張する予定である。 再発性多発軟骨炎では「血清MMP-3」と「抗タイプIIコラーゲン抗体」が疾患バイオマーカーと考えられているが、本研究組織ではそれぞれが異なった機序で病態に関与している可能性があることを報告した。すなわち、抗タイプIIコラーゲン抗体は、炎症を伴って耳介軟骨炎惹起に関与しており、血清MMP-3は生体総体の軟骨変性量を反映し疾患進展のバイオマーカーとなり得る可能性である。異常T細胞は、前段の炎症反応に寄与している可能性が高い。適時適切な治療方法の選択に連結する解析結果となると考えている。 また拡張する疾患は、ベーチェット病に加え慢性腎臓病(次②項参照)を解析する。現在までのベーチェット病の研究では、ガイドラインにて使用するような有力なバイオマーカーは発見し得ていないが、本研究組織ではヒートショック蛋白の病態への関与を報告している。関連を検討したい。 ②慢性腎臓病における腸内細菌叢メタゲノミクスとT細胞機能解析の実施 前述2疾患での実績を活かして、「慢性腎臓病」における研究を開始する。慢性腎臓病・腎不全では、肝臓で産生される尿毒症物質が腎排泄されず蓄積される。これが腸管粘膜に働いてバリア機能を低下すると考えられている。バリア機能の低下は細菌のトランスロケーションやエンドトキシン血症を来しやすく、これが腎不全のさらなる悪化に連結する。これが腎機能低下時の腸-腎の悪循環であるが、これらの要素と腸内細菌叢との関連は不明のまま残されているところが多い。この解明をポイントとする。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Propionate-producing bacteria in the intestine may associate with skewed responses of IL10-producing regulatory T cells in patients with relapsing polychondritis.2018
Author(s)
Shimizu J, Kubota T, Takada E, Takai K, Fujiwara N, Arimitsu N, Murayama MA, Ueda Y, Wakisaka S, Suzuki T, Suzuki N.
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Journal Title
PLoS One.
Volume: 13
Pages: e0203657.
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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