2018 Fiscal Year Research-status Report
自然免疫異常によるグラム陽性菌感染症の重症化機序についての解析
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17K10011
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊 敏 北海道大学, 医学研究院, 助教 (40292007)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | グラム陽性菌感染 / マクロファージ / 好中球 / Toll-like receptor 2 / サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
S. aureus感染させたTLR2欠損(KO)マウスは、野生型(WT)マウスに比べて明らかに生存率が低く、S. aureusに対して感受性が高いことが判明した。また、TLR2KOマウスではマクロファージおよび好中球の組織への浸潤はWTマウスと同程度に認められた一方、TLR2KOマウスの排菌が遅れ、死亡まで臓器内の生菌数が高濃度に残存した。マクロファージの貪食能を調べたところ、TLR2KOとWTマウスの間に有意差が認められなかった。これらの結果から、TLR2は食細胞の遊走能に影響しないこと、マクロファージのTLR2は感染初期のS. aureusの貪食排除に必須でないことが分かった。さらに、感染TLR2KOマウスの各臓器(肝、脾、肺、血中)において炎症性サイトカインTNF-α、IL-6は感染初期に過剰に産生することが認められた一方、抗炎症性サイトカインIL-10の産生は臓器により異なることが示唆された。これらの結果から、TLR2欠損はサイトカインストームを惹起し、マウス死因の一つになると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サイトカインストームにおけるマクロファージと好中球の寄与を調べるために、WTマウスおよびTLR2KOマウスよりそれぞれ肝臓マクロファージ、肺マクロファージおよび腹腔誘導好中球を分離し、in vitroにおいてこれらの細胞のサイトカイン産生能をリアルタイムPCR法、ELISA法にて、感染マウスの各臓器に浸潤したマクロファージのサブタイプをフローサイトメーター、化学免疫染色により評価しているところ。
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Strategy for Future Research Activity |
今後主にin vitroにおいてTLR2欠損によるマクロファージ、好中球機能異常のメカニズムを解析し、グラム陽性菌感染病態の形成におけるTLR2の役割を明らかにする。 具体的に、(1) TLR2KOマウスの臓器に多量の生菌が残存したことから、TLR2欠損によりマクロファージおよび好中球の殺菌力が低下したと考え、これらの細胞の活性酸素産生能(殺菌能)をChemiluminescence測定により評価する。(2) IL-10は主にマクロファージより産生される。感染臓器においてIL-10の産生が異なるのは、各臓器に浸潤したマクロファージのサブタイプによるものと考えられ、各臓器のマクロファージをフローサイトメーターや化学免疫染色により検討する。さらに、IL-10の産生経路において影響因子を同定する。
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Causes of Carryover |
機器(gentleMACS Octo Dissociator (Miltenyi Biotec))の購入は、他の研究者と共同で購入したため、平成29年度の助成金の一部は平成30年度へ繰り越すこととなった。 繰り越し部分は、H30年度に試薬の購入費、マウスの飼育費に充てた。
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