2018 Fiscal Year Research-status Report
Study on the host-parasite communications in malaria mediated by platelet-derived exosomes.
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17K10014
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
磯尾 直之 帝京大学, 医学部, 講師 (80420214)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エクソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの成果として、マラリア原虫感染マウスの血中ではCD36+CD41+エクソソームが増加していること、感染赤血球からは本来赤血球が殆ど持たないCD36とCD41が明瞭に検出され、多くがco-localizeしていることが判明した。CD36ノックアウトマウスの赤血球からは原虫感染後もCD36は検出されず、またCD36ノックアウトマウスから骨髄移植をおこなったコンジェニックマウスの赤血球も同様であった。これらのデータから、マラリアでは宿主血小板に由来するエクソソームがCD36を感染赤血球と内部原虫に輸送し、内部原虫はこのCD36を利用して宿主HDLを取り込み、増殖に必要なコレステロールを獲得していると推定された。 当年度はさらに、CD36+CD41+エクソソームが感染赤血球に取り込まれることの直接の証明を試みた。まず巨核芽球系cell lineであるCMK11-5を、フォルボルエステルを用いて血小板様に分化誘導した。次に培地へのCaCl2とカルシウムイオノフォアの添加により細胞内Ca濃度を上昇させ、この刺激によりエクソソームを培地中に放出させ、回収・精製した。 上記エクソソームはウエスタンブロット法によりCD36+,CD41+であることが確認された。これをDiIで標識したものを用いて、ex vivoで原虫感染赤血球への移行を観察した。非常に興味深いことに、DiIシグナルは非感染赤血球からは観察されず、感染赤血球からのみ観察された。感染赤血球でのDiIシグナルのパタンは2通りあり、ほぼ感染赤血球膜のみが染まっているもの、赤血球膜は染まっていないが内部原虫のみが染まっているものがみられた。前者ではエクソソームが赤血球細胞膜と直接融合した結果で、後者はエクソソームが赤血球細胞膜とは融合せずエンドソームに内包されて取り込まれた結果と推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初用いる予定であった巨核芽球系cell lineのCMK86は、フォルボルエステルによる分化誘導を試みてもCD41の発現が乏しく、CD36+CD41+エクソソームを得ることが困難であった。そこでより分化度の高いCMK11-5を用いることにより、目的のエクソソームを得ることに成功した。一方フォルボルエステルによる分化誘導を行わないCMK11-5からはCD36+CD41-エクソソームが放出されることが判明した。両エクソソームの感染赤血球への移行を比較したところ、CD36+CD41+エクソソームがより感染赤血球へ移行しやすいことが判明し、CD41が他のインテグリン分子同様、エクソソームの「郵便番号」となっている可能性が示唆された。 また、エクソソームの標識のため、当初はin vitro exosome packaging法によりエクソソーム内部にカーゴ蛋白としてGFPを取り込ませようと試みたが、残念ながらGFPをコードしたXPackクローニングプラスミドのstable transfentant CMK11-5が得られなかった。そこでalternativeとして、エクソソームの脂質二重膜をDiIで標識する方法に切り替えた。この方法を採ったことで、思わぬ副産物があった。DiIは脂質二重膜(の特にリン脂質部分)と強い親和性があるため、エクソソームが感染赤血球膜と直接融合するか否かが反映される。前述のように感染赤血球と内部原虫のDiIシグナルパタンには2種類が存在し、図らずもエクソソームの取り込まれ方に少なくとも複数の経路があることが示されたのである。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)FTY720のようなS1P受容体のmodulatorを投与することで、カーゴタンパクが「空」の状態になったエクソソームが放出されることが知られている。FTY720を用いたin vivo studyにより、感染個体の血漿中のエクソソームを解析し、マラリアに対する治療効果を検証する。 (2)アルテミシニンの作用機序は明確にはされていないが、アルテミシニンは強いPI3K阻害活性をもつ。一方、骨格筋細胞や心筋細胞でCD36がインスリン依存的に細胞膜と細胞内プールとの間でトランスロケーションを生じ脂質取り込みに関与するが、これはPI3K依存的であるという報告がある。これらから、我々はアルテミシニンは赤血球膜と原虫虫体間でのCD36トランスロケーションを抑制することにより奏功しているのではないかという仮説を立てている。このことをCD36の免疫染色により検証する。 (3)CD36+CD41+エクソソームの動脈硬化症への関与。我々は既に、CD36+CD41+エクソソームがマウス腹腔マクロファージによく取り込まれ、さらにマクロファージをアセチル化LDLを用い泡沫化するとさらに多く取り込まれることを見出した。すなわち、動脈硬化症の発症進展においては「マクロファージ泡沫化→より多くの細胞膜CD36→より多くの脂質取り込み→さらなるマクロファージ泡沫化」という一種の悪循環が形成されている可能性がある。この点をふまえ、以下のことをおこなう。 (ⅰ)動脈硬化モデル動物において、血漿中のCD36+CD41+エクソソームの増加を証明する。 (ⅱ)動脈硬化モデル動物において、血漿中のCD36+CD41+エクソソームが実際に動脈硬化巣の内皮下マクロファージに取り込まれることを証明する。
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Causes of Carryover |
予想外のデータが得られたことで、新しい研究テーマができ、このための費用が必要になった。
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