2017 Fiscal Year Research-status Report
薬剤耐性肺炎桿菌感染症の制御を目指した耐性菌出現機構の解明
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17K10027
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
中野 竜一 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (80433712)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 寿一 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (20374944)
遠藤 史郎 国際医療福祉大学, 国際医療福祉大学塩谷病院, 教授 (40614491)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | カルバペネマーゼ / カルバペネム耐性腸内細菌科(CRE) / カルバペネマーゼ非産生CRE / 腸内細菌科 / ポーリン欠損 / NMC-A |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では臨床で問題となっているカルバペネム耐性腸内細菌科(CRE)について、どのような耐性機構を持っているのか、またその耐性菌がどのような要因(背景)で出現するのか明らかにする事を目的としている。耐性化しやすい耐性菌の特徴や、耐性菌が出現する抗菌薬の投与法を解明することで、耐性菌感染症の蔓延を制御することが期待できる。昨年度は本邦におけるCREの収集ならびにその耐性機構の解明を行った。さらにこれまで本邦における報告例のないNMC-A産生菌を初めて分離したためその特徴についても明らかにした。 ①本邦におけるCREの分離培養ならびにその耐性機構の解明 カルバペネム耐性株600株を収集し、その耐性機構を解明した。カルバペネマーゼ産生株について、大腸菌、肺炎桿菌ともそのほとんどがIMP型遺伝子を保有している事が判った。最も多かったIMP-6産生株は、そのほとんどがゲノム型、プラスミド型ともに共通性が多かった。カルバペネマーゼ非産生株について解析したところ、セファロスポリナーゼ(CTX-M型βーラクタマーゼやプラスミド性AmpCβ-ラクタマーゼ)を産生するポーリン欠損株が30株存在することが判明した。大腸菌、肺炎桿菌ともその欠損様式(点変異、IS挿入によるフレームシフトなど)は多様で、ゲノム型も同様に様々なタイプが存在していることが判った。 ②カルバペネマーゼNMC-A産生菌の分離とその耐性機構の解明 CREの中からこれまで本邦での報告例のないNMC-A産生菌を分離した。本菌は欧州での報告があるが、アジア圏において初めての検出例であることが判った。菌種はEnterobacter cloacae complexであり、調節遺伝子NMC-Rも同時に保有していた。誘導実験から、このNMC-RによってNMC-Aの発現量が調節されており、中でもカルバペネム薬が高い誘導能を持つことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予定していた菌株を収集し、順調に耐性株の解析を進めることができた。カルバペネム耐性肺炎桿菌について、分子遺伝学的解析ならびに生化学的解析を行うことで耐性株の特徴を明らかにすることができた。またカルバペネマーゼ産生株についても分子疫学解析により、本邦における耐性遺伝子の特徴も解明できた。さらに本邦で初めての検出例となるカルバペネマーゼNMC-A産生菌を分離する事ができたため、さらに進展してこの耐性機構の解明も進めているところである。これら研究成果の一部について国内外の学会にて発表しており、論文投稿に向けデータの最終調整中である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた耐性株について、予定通り分子遺伝学的解析ならびに生化学的解析を進めデータを蓄積する。特にカルバペネマーゼ非産生CREを中心にその遺伝学的背景を明らかにし、耐性メカニズムの解明を目指す。ここで明らかになったデータを基にカルバペネマーゼ非産生CREが出現する要因(背景)の解明を目指し、各種状況を想定したモデル実験を行う予定である。 新たに得られたNMC-A産生菌についても引き続きその耐性機構の解明を行う。また本菌は本邦において判別が難しいことからその検出法の開発も合わせて行う予定である。カルバペネマーゼ産生菌など臨床現場で問題となっている耐性菌についても引き続き注目して行く予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度は検体収集を優先しており、多くの解析費用がかからず十分に実験することができた。本年度はさらなる詳細な解析を行うため、遺伝学的解析ならびに生化学的解析に必要な試薬を購入し、実験を行う予定である。また予定していた機器は購入せずに実験を行うことができたため、本年度は代替のものを購入し、研究を加速させる予定である。
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Research Products
(11 results)