2020 Fiscal Year Research-status Report
結核菌由来ManLAMによるスフィンゴ脂質代謝酵素の活性阻害機構
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17K10031
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
中山 仁志 順天堂大学, 医療看護学部, 准教授 (70514933)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マンノースキャップ型リポアラビノマンナン / 結核菌 / スフィンゴ脂質代謝 / ラクトシルセラミド / 脂質ドメイン / ヒト好中球 / 食胞成熟 |
Outline of Annual Research Achievements |
結核菌やMycobacterium avium complex(MAC)などの病原性抗酸菌は貪食細胞へ取り込まれた後も、食胞へのリソソームの融合を阻害することで、細胞内へ寄生する。近年申請者は、この機構に抗酸菌の細胞壁成分であるリポアラビノマンナン(LAM)と宿主貪食細胞に発現するスフィンゴ糖脂質ドメインとの会合が重要な役割を果たしていることを明らかにしてきた。また、本研究過程で、結核菌などの病原性抗酸菌はマンノースキャップ型のLAM(ManLAM)をヒト好中球に発現するラクトシルセラミド(LacCer)ドメインへ結合させ、さらに、スフィンゴ脂質代謝酵素を標的として、その活性までも妨害することを明らかにした。本年度は、前年度からの研究をさらに展開し、上記に示したスフィンゴ脂質代謝酵素の基質となる分子の局在を解析した。超解像顕微鏡(STED顕微鏡)を用いて、好中球へManLAMコートビーズ及び非病原性抗酸菌M.smegmatis由来PILAMコートビーズを貪食させた後の食胞を観察した。その結果、PILAMコートビーズにおいては、基質となり得る分子が集積していたのに対して、ManLAMコートビーズでは、当該分子の集積が認められなかった。また、このような基質分子の代謝機構には複数のスフィンゴ脂質代謝酵素が関与することが示唆された。これらの結果から、食胞膜においてスフィンゴ糖脂質が形成する脂質ドメインとそのドメインを起点とするスフィンゴ脂質代謝が食胞成熟に必要であることが分かった。今後さらなるメカニズムの解明を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
スフィンゴ脂質代謝酵素の活性化(リン酸化)測定、スフィンゴ脂質代謝酵素関連基質や産生成分の局在解析に時間を要しているため。またコロナ禍により、研究施設の使用を十分にできなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
幾つかのスフィンゴ脂質代謝酵素の関与が分かってきたので、各酵素の遺伝子発現抑制を行い、その効果について検討する。さらに、スフィンゴ脂質代謝酵素及びその基質、産生成分の活性測定並びに細胞内局在を明らかにしていく。そのような解析を推進することで、結核菌による細胞内スフィンゴ脂質代謝阻害メカニズムの一端を明らかにできる。
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Causes of Carryover |
最終的なステップとして、スフィンゴ脂質代謝酵素活性の測定や細胞内における生理活性脂質の局在解析を行う予定であるが、コロナ禍による研究の遅れに伴い、本段階に必要な消耗品の購入を十分にできなかった。既に実験を計画しており、これら消耗品については次年度購入する予定である。
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