2017 Fiscal Year Research-status Report
高病原性H5N1のシアル酸非依存的感染経路における新規受容体の同定
Project/Area Number |
17K10043
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
梶原 直樹 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 主任研究員 (70453917)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大保木 啓介 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 副参事研究員 (80415108)
芝崎 太 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, プロジェクトリーダー (90300954)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | インフルエンザ / H5N1 / 感染 / シアル酸 / ヘマグルチニン |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究で、H5N1高病原性鳥インフルエンザウイルスがシアル酸欠損細胞にも感染可能なことを見出し、新規受容体として3種類の候補分子(Coagulation factor II thrombin receptor、Frizzled class receptor 6、Sphingosine-1-phosphate receptor 1)を抽出した。H5N1高病原性鳥インフルエンザウイルスの感染阻害薬を開発するためには、シアル酸非依存的な感染経路における受容体の同定が非常に重要である。 そこで、平成29年度は前述の受容体候補分子の機能的な検証を行った。ゲノム編集技術を利用し遺伝子欠損細胞を作製したが、タンパク質レベルの欠失が確認できず、目的の欠損細胞を樹立することはできなかった。一方で、受容体候補分子の過剰発現細胞を作製し、細胞への侵入能を検討したが、著明な影響は見られなかった。Sphingosine-1-phosphate receptor 1に対しては、受容体拮抗薬の効果も検討したが、未処置との間に顕著な差は見られなかった。新たな受容体候補分子を見出すために、ハプロイド細胞とジーントラップ法を用いたスクリーニングなどを進めている。 また、我々はリバースジェネティクス法を用いて、H5N1高病原性鳥インフルエンザウイルスのヘマグルチニンを発現する組み換えウイルス及びその変異体を作製した。これらの組み換えウイルスを使用して、ヘマグルチニンの開裂部位に存在する複数の塩基性アミノ酸がシアル酸非依存的な感染に関与するかどうかを次年度に明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は、H5N1高病原性鳥インフルエンザウイルスのシアル酸非依存的な感染経路の分子機構を解明すべく、受容体の同定に取り組んだ。機能検証実験により3種類の受容体候補分子の関与が否定的となったため、新たな受容体候補分子の探索が必要となり、計画していた相互作用実験及びシグナル伝達経路の解析を進めることができなかった。よって、「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
Haploid genetic screeningを用いて、受容体の候補を選別する。この方法では、ハプロイド細胞にGene trap 用Retrovirusを感染させ、ランダムに遺伝子が破壊された細胞集団を作製、細胞侵入能が抑制された細胞群を濃縮し、RACE法などにより挿入遺伝子の位置を特定する。特定された遺伝子のノックアウトまたは過剰発現細胞を作製し、機能的検証を行うことで、新規受容体を同定する。 また、免疫沈降法により新規受容体がH5N1高病原性鳥インフルエンザウイルス及びヘマグルチニンと相互作用することを実証する。哺乳類細胞の蛋白質発現系や表面プラズモン共鳴測定装置などを用いて、新規受容体とヘマグルチニンの分子間相互作用についても解析を行う。
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Causes of Carryover |
(理由) 現在までの進捗状況に記述した通り、本年度に計画していた相互作用実験及びシグナル伝達経路の解析を進めることができなかったため、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 生じた次年度使用額については、翌年度中に使用する予定である。使用目的は、主として交付申請書に記載の通りであり、未解決の研究課題実施のために使用する。 具体的には、分子生物学実験試薬、細胞培養試薬、抗体等の一般試薬などの物品費、学会参加や出張のための旅費として使用する予定である。
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