2017 Fiscal Year Research-status Report
Identification of a novel gene causing cholesterol synthesis deficiency
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17K10044
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菊池 敦生 東北大学, 大学病院, 助教 (30447156)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仲川 清隆 東北大学, 農学研究科, 教授 (80361145)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 無毛症 / コレステロール合成経路 / 脂質代謝 / 新規病因遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
コレステロール合成経路酵素欠損による先天代謝異常症では多発奇形に種々の先天性皮膚・毛髪異常を伴うものがある。しかし、コレステロール合成経路酵素の欠損症は未だ大部分の酵素でヒトでの報告がない。研究代表者は毛根炎を伴う先天性無毛症と多発奇形を呈した兄弟例のエクソーム解析からコレステロール合成経路酵素をコードする新規候補遺伝子Xを同定した。本研究では新規候補遺伝子Xが無毛症を伴う先天奇形症候群を引き起こす遺伝学的・機能的証明を試み、病態解明に加えて病因特異的治療の提案を目指す。 1.平成29年度は遺伝子Xの皮膚特異的ノックアウトマウスを2種類作成した。コンベンショナルな皮膚特異的ノックアウトマウスは新生児死亡であったがヒゲを欠損しており、患者の表型系に類似していると思われた。皮膚バリア機能欠損による脱水よる死亡が確認され、これも患者の表現型に関連したものと考えている。さらに成獣での表現型解析のためにタモキシフェン誘導による皮膚特異的ノックアウトマウスを作成した。タモキシフェンによる遺伝子欠損誘導後、脱毛が得られ、患者の表現型を再現していると考えている。 2.本酵素の変異による表現型の多様性や、疾患モデルマウスの機能解析のため、皮脂や各種臓器、細胞を材料とした中間代謝産物の測定系を立ち上げている。皮脂や各種臓器での測定系は確立し、現在この系を利用したin vitroでの酵素活性測定(主要経路・副経路)のため、条件検討を行っている。 3.遺伝学的証明のため、国内の無毛症・乏毛症研究者に同一の表現型をもつ患者がいないか照合を行った。現在のところ同様の患者はおらず、さらに国内外の稀少難病エクソームデータと照合するか検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.皮膚特異的ノックアウトマウスの作成と表現型解析 平成29年度は皮膚特異的ノックアウトマウスの作成と表現型解析が目標の1つであった。遺伝子X改変マウスを作成し、無毛症を来すかを中心に表現型を解析し、遺伝子Xの変異によって患者の表現型が再現されるか示す予定であった。まず皮膚特異的ノックアウトマウスを作成したところ、ヒゲを欠損したマウスが得られた。このマウスは出生1日以内に死亡した。原因を解析したところ、表皮バリアの欠損による脱水であることが判明した。さらに成獣での表現型を解析するためにタモキシフェン誘導による皮膚特異的ノックアウトマウスを作成したところ、脱毛が得られた。これらのマウスの表現型は患者の表現型である無毛症と類似ないし合致すると考えている。 2.コレステロール合成経路中間代謝産物の測定・酵素活性測定 疾患モデルマウスから採取した組織での中間代謝産物の測定では、皮膚のみで基質・産物比の変化があり、代謝ブロックが起きていることが示唆された。in vitroの中間代謝産物の測定やそれをもとにした酵素活性測定の系については現在構築中である。サンプルの溶解条件や基質の濃度などについて条件検討を行っている。 3.遺伝学的証明 遺伝子Xの変異が無毛を呈する遺伝学的証明には血縁関係のないさらなる症例の同定が必要である。国内の無毛症・乏毛症研究者に照会したところ、当該症例と類似した症例はないとの回答であり、本症例の希少性が明らかとなった。国内外の稀少難病エクソームデータへの照合を検討しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
1.皮膚特異的ノックアウトマウスを作成したところ、脱毛が得られた。このモデルマウスを用いて遺伝子Xによる無毛症発症の病態を解析する。免疫染色、電子顕微鏡などを併用して病理組織学的所見を検討する。また、ケラチノサイトを分離し、モデルマウスにおける遺伝子発現変動をRNA-Seqないし発現アレイ、RT-qPCRで検討し、遺伝子Xの皮膚特異的ノックアウトマウスにおいてどのパスウェイが変動し、無毛症と関係しているか推察する。 2.コレステロール合成経路中間代謝産物の測定・酵素活性測定 遺伝子Xや同一パスウェイの遺伝子変異は無毛症とは全く異なる表現型をとることが知られている。当該患者ではこの表現型はみられない。この表現型の多様性の理由を検討するために変異ごとの酵素活性測定系の構築を平成29年度に続いて試みる。主要経路の基質・産物の測定は可能となっているため、主要経路の酵素活性をはじめに試みる。並行して副経路の基質・産物の測定系を確立する。副経路の測定系が確立できた場合はこの酵素活性測定も試みる。 3.モデルマウスに対して病因特異的治療を試みる。抗高脂血症薬や産物の補充を外用または内服によって行い、無毛症に対する効果が得られるか検証する。また、治療時の皮膚における基質・産物の変動を2.で確立した系を用いて観察する。
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Causes of Carryover |
実験試薬等の効率的使用に努めた結果、次年度使用額が生じた。引き続き試薬や消耗品の使用は効率的となるように心がける。一方実験の信頼度を高めるために実験の試行回数を増やしたり、検討条件を増やす必要がある場合がある。この目的にも、次年度使用額と翌年度分をあわせて用いていく。
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