2018 Fiscal Year Research-status Report
注意欠如多動性障害(ADHD)における細胞接着分子Arcadlinの関与
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17K10064
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
竹宮 孝子 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (70297547)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 新 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 研究員 (20392368)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Arcadlin / 注意欠如多動性障害(ADHD) / 多動性 / 衝動性 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、arcadlin遺伝子欠損マウス(arcad-/-)は野生型マウス(wt)に比べて新規環境において多動を示すことが判明していた。さらに、明暗箱や十字迷路試験では、arcad-/-に衝動性が認められた。ところが、ホームケージのような慣れた環境下では短時間でも長時間観察においても行動量の増加は見られなかったことから、新規環境においてのみ多動・衝動性が誘発されることがわかった。さらに、強制水泳試験からarcad-/-にストレス耐性が示された。また、arcad-/-は痛み感受性がwtと変わらないにも関わらず受動的回避的学習機能が低かった。これは痛みストレスに対する耐性が関係するのかもしれないと考えられた。一方、arcad-/-は水迷路試験の空間記憶学習機能に低下はないが、一時的に記憶の定着が悪く注意欠如と考えることができた。さらに、Y字迷路試験では作業記憶の低下もなく、これらの結果から海馬や前頭前野に関係する記憶学習機能に障害はないと考えられた。また、社会性については、acad-/-は後方から近づくフォローの時間が有意に長かった。つまり、他者との距離感がつかみにくいことからコミュニケーション能力の低下が疑われた。 メチルフェニデート(MPH)投与前後の行動量の変化においては、arcad-/-は過活動が続き、MPHで多動が抑制されるドパミン系ADHDモデルとは異なる反応を示した。なお、脳MRIでは、線条体と海馬の面積に有意差はなかったが、大脳皮質の面積はacad-/-が有意に広かった。 以上より、acad-/-には多動、衝動性、注意欠如など注意欠如多動性障害(ADHD)モデルとしての特徴があり、コミュニケーション能力の低下も疑われた。しかし、ドパミン系ADHDモデルの特徴はないことがわかり、ArcadlinがADHDの新しい機序に関わる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでにarcadlin遺伝子欠損マウス(arcad-/-)の行動の特徴が明らかとなり、多動、衝動性、注意欠如など注意欠如多動性障害(ADHD)モデルとしての特徴を持っていることがわかった。しかし、ドパミン系ADHDモデルの特徴は示さないことがわかり、ArcadlinがADHDの新しい機序に関わる可能性が示唆された。平成30年度中の計画の行動実験についてはほぼ解析を終えているが、一部の実験は結果の検証が必要であるとともに、免疫組織染色や脳波解析など平成30年度の計画の一部が途中段階のものがある。しかし、いずれも進行中であり、数か月の遅れの範囲であるため平成31年度内には終了できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度中に行った行動実験のうち、明暗箱以外の新規環境における衝動性の解析、ホームケージ内での餌の摂取量と体重変化、arcad-/-とwtの間の追跡については、個体数を増やして確認・検証が必要と考えている。なお、Golgi染色でのスパインで形態変化については、すでにGOlgi染色までしているので平成31年度の前半で解析を行いarcad-/-とwtの比較検討を行う。また、MPH投与後の脳内変化については、行動変化まで解析済みであり脳の薄切まで終了しているので、組織免疫染色によるArcadlinやArcの発現と脳波の周波数解析の関係を調べ、arcad-/-とwtの比較検討を行う。これらも平成31年度の前半までで解析を終了する。 また、平成31年度はArcadlinがADHDの新しい機序に関わるメカニズムについて検討する。wtの仔マウスに対し、NMDA antagonistであるMK-801または生理食塩水を数回投与し、その後通常通りの飼育を行い、生後12週において平成29, 30年度に実施した行動実験を行い、両群を比較検討する。また、同時期にMRI画像を取得し、脳の各部位の面積を比較する。さらに、灌流固定後の両群のマウス脳を用いて、Arcadlinの発現とスパイン密度、スパイン形態の変化を組織免疫染色およびGolgi染色から調べる。
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Causes of Carryover |
平成30年度は、単年ではなく平成29、30年度の計画を合わせ、できるだけ使用動物数を減らして効率よく実験を進めることができた。一方、行動解析に予想以上に時間がかかり、平成30年度の計画の一部が平成31年度に持ち越しとなってしまったため、平成30年度に使用予定の費用の一部が平成31年度使用に変更となった。
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Research Products
(5 results)