2017 Fiscal Year Research-status Report
Whole genome analysis of congenital malformations
Project/Area Number |
17K10069
|
Research Institution | Kanagawa Children's Medical Center (Clinical Research Institute) |
Principal Investigator |
黒澤 健司 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 部門長 (20277031)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 遺伝子 / ゲノム / 先天異常 / 精神遅滞 / エクソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
多くが原因不明とされるヒトの先天異常に対して、さまざまな網羅的ゲノム解析技術を応用して、その原因や発症メカニズムを明らかにした。診断法の確立、医療管理指針作成や、発生頻度の推定、さらには治療(症状軽減)法の手掛かりを得ることによる先天異常の予後改善を目標に据えた。研究期間内に250例の先天異常症例を臨床的にスクリーニングし、既知疾患130症例を除外、文書により同意が得られた90症例に対して、メンデル遺伝病責任遺伝子を中心とした臨床エクソーム解析を行った。検出された変異に対しては、トリオシーケンスないしは細胞遺伝学的解析(CGHマイクロアレイ解析ならびにFISH解析)により検出変異の確定を行った。15症例で疾患原因となる遺伝子変異ないしはゲノム微細構造異常を検出した。検出された7つの変異は未報告変異で、先天異常におけるゲノム変異と臨床症状(表現型)の相関関係を明らかにすることができた。具体的成果として、精神遅滞・自閉症を主症状とする男児例において、SYNGAP1遺伝子に従来位報告のない新規の遺伝子変異を検出した(Kimura & Kurosawa, Cong Anom. 2018)。これまで報告された多くのSYNGAP1(シナプス性RAS-GTPase活性化タンパク1)変異症例は、小頭症、てんかん、精神遅滞を主症状とし、大頭症はほとんど記録がない。しかしながら、本例は大頭症と特徴的顔貌を有し、その変異はRasGAPドメインに位置していた。本例は本邦で最初のSYNGAP1変異症例で、かつ、ドメインの機能的重要性と結果としての臨床症状(表現型)の相関関係を検討する上で極めて重要な症例であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既に、検出されたゲノムベースの変異と臨床症状(表現型)の相関関係、さらにヒトの発生異常をきたした変異の発症メカニズムに関する検討は、初年度に3報の論文として公表するに至った。
|
Strategy for Future Research Activity |
網羅的なゲノム解析技術を用いて先天多発奇形症例の表現型とゲノム変化の相関関係を明らかにし、異常表現型から正常発生の仕組みを明らかにする。今後は解析技術として全ゲノムシーケンス解析を導入し、遺伝子発現調節領域の変化も視野に入れる。さらに発症がその候補遺伝子の機能障害であることを確認するために、患者細胞を用いた機能解析を進める。具体的には、遺伝子転写産物の発現の定量化(多くは初期発生に関わる遺伝子である可能性が高いために、株化リンパ芽球をいったん樹立して異所性に発現するmRNAを定量する必要がある)など転写産物解析を行う。並行して、先天多発奇形症例800例のゲノムサンプルのスクリーニングにより、同じ遺伝子の変異を原因とする先天多発奇形を検出し、臨床症状を比較することにより、ヒトの発生に関わる遺伝子の普遍的な機能と病態の関連性を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
1年度のみでは当初予定とした症例数に至っておらず、引き続きのゲノム解析が必要で、かつ得られた成果の公表と成果を用いた海外研究施設との国際共同研究への発展も視野にはいるので、次年度使用は必要である。
|