2018 Fiscal Year Research-status Report
疾患モデルマウスを用いたSLC19A3欠損症の治療法の確立
Project/Area Number |
17K10070
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
若松 延昭 香川大学, 医学部, 客員研究員 (60274198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 紀子 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 遺伝学部, 研究助手 (00393132)
山田 憲一郎 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 遺伝学部, 主任研究員 (30291173)
千葉 陽一 香川大学, 医学部, 講師 (30372113)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | SLC19A3 / 疾患モデルマウス / チアミン / 治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
チアミントランスポーター(SLC19A3)は、膜を6回貫通する膜貫通型タンパク質であり、特に小腸上部の微絨毛の刷子縁に多く発現しており、摂取したチアミンの体内への取り込みに重要な役割を行っている。SLC19A3欠損症(THMD2; OMIM 607483)は常染色体劣性疾患で、その変異の種類により、乳児期に発症する重症の症例から青年期に発症しウエルニッケ様症状を呈する軽症の症例まで様々な症状が見られる。我々は、出生後に急速に脳萎縮が進行し、著しい発達障害が見られた症例よりSLC19A3遺伝子のホモ接合性変異(E320Q)を同定して報告した(Yamada et al., 2010)。SLC19A3欠損症では発症早期に大量のチアミンを経静脈投与することが有効な治療法であるが、チアミンの投与により発症時の脳病態がどのように改善されるかは未だ十分に解明されていない。そこで、本年度は、チアミン制限餌で飼育したKOマウス脳を免疫組織学的手法を用いて継時的に解析を行った。KOマウスをチアミン制限餌で飼育すると、2日間の飼育では免疫染色で脳に異常は見られなかった。しかし、3日間の飼育で、視床にアストロサイト活性化、ミクログリア出現と血管内皮細胞のICAM-1発現が出現し、6日間の飼育では、視床に著しいアストロサイトの活性化、ミクログリアの増加と活性化、ICAM-1発現の上昇と神経細胞死が見られた。2日間チアミン制限餌で飼育した後に高チアミン餌を開始すると半数のKOマウスが生存するので、チアミン制限餌の2日以内に高チアミン餌を開始することは、アストロサイト、ミクログリアの活性化と血管内皮細胞の異常を改善し、神経細胞死が軽減されると考えられる。上記の初期脳異常所見を改善する、チアミン以外の薬物の同定が患者の急性症状を改善すると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チアミン制限餌で飼育したSLC19A3のKOマウス脳を免疫組織学的手法を用いて継時的に解析し、3日目より視床にアストロサイト活性化、ミクログリア出現と血管内皮細胞のICAM-1発現が出現するのを明らかにした。6日間の飼育では、視床に著しいアストロサイトの活性化、ミクログリアの増加と活性化、ICAM-1発現の上昇と神経細胞死が見られた。以上、本年度はSLC19A3欠損症の疾患モデルマウスを用いて、チアミン制限食にしてからのマウス脳の変化を病理学的あるいは生化学的手法を用いて経時的に解析し、本マウスの初期病態が明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の研究により、SLC19A3欠損症の疾患モデルマウスを用いて、チアミン制限食にしてからの3日目から初期の脳病態が起こることが明らかになった。そこで、本年度はチアミン制限食にしてから初期病変が出現する以前の2日間にミノマイシンやN-アセチルシステイン(NAC)などの様々な薬剤を投与し、SLC19A3欠損症患者の症状を改善し、後遺症を軽減するチアミン以外の薬の同定を行う。
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Research Products
(5 results)