2017 Fiscal Year Research-status Report
Direct differentiation of peripheral blood cells into neurons for the analysis of epigenetic-related diseases
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17K10083
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石川 充 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (10613995)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ダイレクトリプログラミング / iN / エピゲノム / 神経疾患 / 末梢血細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、ヒト末梢血T細胞からの直接的な神経細胞誘導技術を開発し、神経疾患のモデル細胞化を目指すものである。初年度は主に、T細胞からの神経分化誘導の効率化を検討した。 すでに線維芽細胞から、iN因子と呼ばれるNgn2, Ascl1, Brn2, Myt1Lなどを用いてある程度の神経細胞への分化誘導が可能なことは知られていた。しかしながら、血液系細胞からの神経誘導は極めて誘導効率が低かった。そこで、我々は初期化因子(Oct3/4, Klf4, Sox2, c-Myc)も導入しながら検討することにした。 分化転換には遺伝子の一過性の強制発現が必要であるが、これまで行ってきた、遺伝子導入方法(エレクトロポレーション)では、細胞死が顕著で、現実的な方法ではなかった。そこでセンダイウィルスを用いた遺伝子発現法に変更した。さらに、誘導時の基礎培地や細胞外基質の選定をしなおしたため、従来の10倍以上の神経細胞誘導効率を発揮することができるようになった。また、これまで誘導された神経細胞はその生存性や成熟性が極めて低かった。この問題はウシ血清を添加させることで、ある程度解決できた。実際、神経細胞の誘導効率を低下させることがあるウシ血清は、分化誘導時には利用されてこない経緯があったが、誘導効率が比較的向上した現在、血清の添加により神経成熟の亢進が可能になった。 今後は、誘導した神経細胞の遺伝子発現パターンなどから、脳のどのような種類の神経細胞を分化作出できるかを検討する。さらに一連の技術を応用して、神経疾患患者由来の末梢血細胞からin vitroで神経への分化転換を行い、表現型解析や創薬の基盤になる方法を開発する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標は末梢血T細胞からの直接神経細胞誘導(TiN)の最適化であった。我々は遺伝子導入の条件、基礎培地、添加化合物、細胞外接着因子などの諸条件を細かく検討した。その結果、当初の目標に対して、予定通り研究が進捗したと判断した。 これまで、神経誘導因子だけで血液系細胞からの神経誘導は極めて誘導効率が低かった。そこで、我々は初期化因子(Oct3/4, Klf4, Sox2, c-Myc)も導入しながら検討することにした。具体的には、Oct3/4, Klf4, Sox2, c-Myc, NeuroD1, Ascl1, Brn2, Zic1を末梢血T細胞に導入することにした。 分化転換には遺伝子の一過性の強制発現が必要であるが、これまで行ってきた、遺伝子導入方法(エレクトロポレーション)では、細胞死が顕著で、現実的な方法ではなかった。そこでセンダイウィルスを用いた遺伝子発現法に変更した。さらに、誘導時の基礎培地や細胞外基質の選定をしなおしたため、従来の10倍以上の神経細胞誘導効率を発揮することができるようになった。また、これまで誘導された神経細胞はその生存性や成熟性が極めて低かった。この問題はウシ血清を添加させることで、ある程度解決できた。実際、神経細胞の誘導効率を低下させることがあるウシ血清は、分化誘導時には利用されてこない経緯があったが、誘導効率が比較的向上した現在、血清の添加により神経成熟の亢進が可能になった。 一連の検討実験により、分化誘導のための最適化を図ることができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は作出した末梢血T細胞由来神経細胞(TiN)の機能性を検証するとともに、脳の領域別、さらには興奮・抑制性別の神経細胞へと作り分けることに挑戦する。 具体的には、初年度に立ち上げた手法に、生理活性物質となるモルフォゲンの添加やその阻害剤を駆使して前脳性神経細胞や中脳・ドパミン神経細胞、さらには後脳・脊髄神経細胞へ、それぞれの誘導を試みる。また、導入する遺伝子の組み合わせを利用して、興奮性神経細胞或いは抑制性神経細胞を作り分けることができるかどうかも検証する。出来上がった細胞は免疫染色やqPCR等でそのキャラクターを詳細に解析するとともに、カルシウムイメージングや電気生理学的な手法で機能解析も行う。 上記の機能性・領域特異性神経細胞を作出することができた場合、さらに翌年以降に医学応用を目指す。具体的には神経疾患患者由来T細胞を用いた疾患特異的解析を試みる予定である。特にメチル化異常を伴う小児疾患のTiN細胞や、加齢に伴って発症する神経変性疾患患者のTiNを作出する。すなわち、iPS細胞を介さない直接的な分化転換法により、本研究を効率的な疾患モデル細胞作出へと到達させたいと考えている。疾患特異的な減少をin vitroでとらえることができたら、疾患メカニズム解析、さらには予防薬・治療薬・診断薬スクリーニングへと応用が可能である。本研究で開発する誘導法が、そのような解析プラットホームになる可能性があると考えている。
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Causes of Carryover |
2017年度において、使用予定金額と実際に利用した金額とで違いが生じた。この主な理由は実験計画の一部変更、および一部の消耗品予定購入額より、納入額が下回ったことにもとづく。 研究計画の一部変更に伴い、次年度にて本額の使用を計画している。具体的には、 実験検討事項の一部拡大が生じているため、当該助成金を、消耗品である細胞培養用試薬の購入に充てる予定である。
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