2017 Fiscal Year Research-status Report
Identifying the role of ICA69 in the induction of type 1 diabetes
Project/Area Number |
17K10084
|
Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
田嶼 朝子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (00328337)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 1型糖尿病 / 自己免疫疾患 / ICA69 |
Outline of Annual Research Achievements |
ICA69は1型糖尿病(T1D)の自己抗原の一つで、T1D自然発症型モデルであるNODマウスでは、T1D抵抗性のあるC57BL/6系統マウスと比較し胸腺でのICA69発現レベルが低下している。我々は、NODマウスにICA69ペプチドを接種すると糖尿病の発症が促進され、さらに胸腺におけるICA69発現を抑制するとICA69を発現する複数の組織において自己免疫反応が惹起されることを明らかにし、T1Dに併発する他の自己免疫疾患発症機構の解明に繋がる可能性を示した(Fan, et al. 2014)。本研究では、遺伝子組換えにより作製したICA69ノックアウトNODマウスを用いて、ICA69に対する免疫寛容の破綻によってT1D発症が促進されるかを検討することを目的とした。 当初ICA-NODマウスを米国の研究室から輸入して繁殖させる予定であったが、適切なマウスが揃わず輸入時期が遅れた。同研究室と情報交換を行い、平成30年2月に繁殖用の雌雄ICA-NODマウス各2匹、糖尿病を発症していない雄のICA-NODマウス5匹、計9匹が当施設に届いた。後者5匹からHE染色、免疫染色およびDNAやRNA抽出のために膵臓、甲状腺、唾液腺などの臓器を採取し、各組織をホルマリンあるいは4%ホルムアルデヒドに保存し、一部はDNA及びRNAを抽出するために凍結保存した。これらのマウスの遺伝子型は既知であり、試薬や実験プロトコールの確認のために抽出したDNAを用いてPCRを行った。またホルマリン液に保存した組織はリンパ球浸潤の有無を比較するためにHE染色を依頼した。一方、繁殖用の雌ICA-NOD2匹は到着時すでに高血糖を呈していたために妊娠は困難であり、T1D自然発症モデルマウスであるNOD/ShiJclをICA-NOD雄マウスとの交配に用いることにつき、遺伝子組換え安全対策委員会の承認を待っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は、研究期間開始後直ちに米国からICA-NODマウスを輸入し、繁殖させ、サンプル数を増やして、糖尿病を発症する前の各臓器(膵臓、甲状腺、唾液腺、肝臓)における組織変化を確認し、ついで糖尿病発症頻度とその時期を検討することを目指した。しかし、研究開始後数カ月を経たのちもマウスを入手できなかった。そこで平成29年8月にInstitute of Cellular Therapeutics、Allegheny Health Networkを訪問したところ、輸入予定であったマウスの繁殖が滞り、目的とする実験ならびに繁殖に適当な週令・年齢のマウスが揃わない状態であることがわかった。帰国後もメールでのやり取りを行い、マウスの繁殖を依頼した。繁殖は順調に進んだが、輸入に際し書類上の手続きに時間を要し、マウスの輸入と飼育および繁殖を開始できたのは平成30年2月であった。しかし繁殖用の雌ICA-NODマウスは2匹共に高血糖を呈しており、1匹は一度妊娠したものの生まれたマウスは生後数日で死亡、その後雌マウスは2匹ともに死亡したため繁殖が滞った。 糖尿病を発症していないICA-NODマウス5匹からは目的に沿って検体を採取した。これらのICA-NODマウスの遺伝子型は既知であり、手技、試薬や実験プロトコールの確認のためにこれらのサンプルを用いてPCRを行ったが、これまで使用していた条件では増幅産物が見られなかった。そこで適切な条件を改めて決定するために試薬やサンプルをかえてPCR反応を繰り返さねばならなかった。 今後の研究に関して、特にICA-NODマウスの飼育と繁殖、実験の条件を確認するために、平成30年3月に再度渡米しDr. Fanと意見交換を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の目的になかった雌NOD/ShiJclマウスを導入して雄ICA-NODマウスと繁殖させ、ICA-NOD系統を維持する。NOD/ShiJclマウスとICA-NODマウスのH2ハプロタイプは共通しているため、実験に大きな影響はないと考える。雄1匹に対して雌1匹のペアで交配を始めるが、繁殖がすすまない場合は雌2匹まで増やす予定である。生まれたマウスに対してPCRにより遺伝子型を確定し、研究に必要な野生型、ヘテロ複合型およびホモ欠損型のマウスを区別する。 当初の計画に則り、対象となるマウスに対して生後4-6週目から血糖測定を行い、遺伝子型により糖尿病発症時期に違いがあるか否かを評価する。また、生後12-16、20および30週の糖尿病を発症していないICA-NODマウスから膵臓、甲状腺、唾液腺を採取し、ホルマリン液に保存した検体にHE染色を行う。すでにHE染色を依頼した検体も含めて、リンパ球浸潤の有無を確認しfocus scoreを比較する。さらに、同じ生後12-16、20および30週の検体を用いてCD45、CD4、CD8、インスリン、グルカゴンに対する免疫組織染色を行うことを目標とする。また、各組織から抽出したRNAをcDNAに転写し、リアルタイムPCRでICA69をエンコードするIca1遺伝子の発現を定量化する。これらをハウスキーピング遺伝子の発現量と比較した上で、組織間の差を検討する。
|
Causes of Carryover |
平成29年度は予定していたICA-NODマウスの繁殖が進まず、十分なサンプル数が揃わなかった。従って、実験に要する試薬、実験動物施設利用や組織学的検査の依頼に必要な費用が想定していたよりも低かった。 平成30年度はICA-NODマウスのコロニーを拡大し、対象マウスに対してエンドポイントである32週まで定期的な血糖測定を行うため、動物施設の利用がこれまでよりも必要となる。糖尿病を発症していないICA-NODマウスからは当初の計画に沿ってDNA、RNAを抽出し、各組織を採取した上でHE染色や免疫組織染色をすすめる。なお、平成29年度に輸入した雄ICA-NODマウスの月齢が高くなっているため、繁殖が滞る場合やマウスの状態が悪化する場合には、改めて米国の研究施設からより若いICA-NODマウスを輸入することも検討している。
|