2018 Fiscal Year Research-status Report
mRNA前駆体制御機構を基盤とした脊髄性筋萎縮症の病態解明
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17K10089
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Research Institution | Microbial Chemistry Research Foundation |
Principal Investigator |
荒川 正行 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 上級研究員 (90398868)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脊髄性筋萎縮症 / mRNA前駆体 / 神経幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊髄性筋萎縮症(SMA)は、原因遺伝子の一つであるSMN1の欠失・変異によるsurvival mutor neuron (SMN) proteinの不足で生じる。一方、正常ヒトでは、SMN1の他に同染色体上にSMN1のホモログであるSMN2遺伝子が存在することが報告されているが、SMA患者では、SMN2遺伝子のコピー数の違いによるSMN2mRNAの発現量やその翻訳されるSMNタンパク質の発現量が、個々の患者病態において異なることが示唆されている。我々の先行研究においても、SMAI型患者由来皮膚線維芽細胞を用いた解析より、SMN2遺伝子のコピー数の違いによりSMN2 mRNAやSMNタンパク質の発現量の差異を有する結果を得ており、その結果を基にして研究を進めている。昨年度までに、SMA患者由来皮膚線維芽細胞2株及び正常ヒト皮膚線維芽細胞を用いた網羅的なRNA-seq解析より、細胞骨格系の遺伝子群やその制御遺伝子が高発現していることを見出した。さらに、本年度は、これらの遺伝子群に加えて解析した結果、神経分化に関わる遺伝子(SERPINF1, DAB1, SEMA3D, SEMA3A)が患者由来細胞2株ともに減少していること、またRho/ROCK signalに関わるが患者由来細胞で高発現していることを見出し、そのタンパク質発現量や細胞内局在について検討している。これらの結果は、SMNタンパク質の発現量の差異によって制御されている可能性を示唆する。さらに、これらの遺伝子発現の神経幹細胞から運動神経への影響を調べるために、ヒト脊髄由来神経幹細胞や運動神経細胞への検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
脊髄性筋萎縮症患者由来線維芽細胞を用いた解析結果から、神経分化に影響する遺伝子の減少が示唆されたために、これら遺伝子発現がSMNタンパク質の増減との関わりを調べるための神経幹細胞から運動神経細胞への分化誘導系の確立が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
脊髄性筋萎縮症(SMA)患者由来の線維芽細胞2株のRNA-seq分析の結果、正常ヒト線維芽細胞と比較解析から神経分化に関わる4つの遺伝子発現の減少、Rho/ROCK signal系の遺伝子の高発現、さらにアクチン制御系の遺伝子の高発現が観測されたことから、原因遺伝子産物SMNタンパク質の不足による神経分化誘導時の細胞骨格の脆弱がSMAの病態に関わると考えられる。SMNタンパク質は、mRNA前駆体制御機構に関わることが知られているが、その標的分子の特定には至っていない。今後は、これまでに同定された遺伝子発現の増減がSMNタンパク質との関わりや神経分化との関わりを細胞レベルや分子レベルでの解析に取り組む予定である。準備が遅れている神経幹細胞の分化誘導系の構築を行い、SMAモデル細胞の構築し、SMNタンパク質の標的分子を明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度では細胞の遺伝子解析データの抽出作業に予想以上に時間がかかり、ヒト脊髄由来神経幹細胞の運動神経分化誘導の実験が遅れている状況で、必要とする抗体や試薬の購入を延期した。次年度、細胞の遺伝子解析データから抽出された遺伝子に関する抗体や試薬などを購入する予定である。
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Remarks |
公益財団法人微生物化学研究会 https://www.bikaken.or.jp
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