2018 Fiscal Year Research-status Report
胎生期神経免疫応答による生後発達期の脳神経ネットワークへ及ぼす影響
Project/Area Number |
17K10090
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
水間 広 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (00382200)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 母体免疫活性化 / 自閉症 / 統合失調症 / マウス / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
小児自閉症や統合失調症患の病因の一つに周産期における神経免疫機構異常の関与が示唆されていることから、本研究では母体感染や生後外的環境ストレス負荷による病態モデル動物を作製し、PETやfMRIによる非侵襲的イメージング法を用いて同一個体で長期間追跡することで、発達に伴う神経ネットワークやシナプス密度の変化を調べ社会性行動異常に関連する領域、神経系を特定し、病態メカニズムの一端を明らかにする。本研究結果から、小児自閉症や統合失調症の病態予測・早期診断、治療に向けた新たなイメージング基盤の確立を目指す。 昨年度に引き続き、病態モデル動物として妊娠12.5日にpolyinosinic acid and polycytidylic acid(poly(I:C))を腹腔内投与されたマウスから出生した雄性マウスを実験に用いた(Poly(I:C)群)。生後10週齢で実施した対個体への社会性行評価法である3チャンバーテストにより、檻の中のマウスへの接触時間が対照群と比較して低下していたPoly(I:C)群を対象に、脳全体での神経活動を調べるイメージング実験を行った。脳機能イメージングでは、通常の生理的条件にて実施するため、脳血流の低下、低体温、低呼吸など身体へ影響する麻酔は使用せず、覚醒下にて行った。[18F]フルオロデオキシグルコース(FDG)を用いたPET測定を行い、Poly(I:C)群では脳内[18F]FDG取込みに変化する領域が認められ、特に脳幹部で有意な活動低下と大脳皮質領域での活動増加が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生後社会行動に異常が認められたPoly(I:C)群の脳神経活動領域を知るために、覚醒下での[18F]フルオロデオキシグルコース(FDG)によるPETイメージングのデータについて、詳細に解析した結果、Poly(I:C)群では対照である正常発達群に比較して、脳幹部で有意な活動低下と大脳皮質領域での活動増加が認められたことから、アンバランスな脳神経活動を呈していることが推測された。今年度はPETに加えて覚醒下でのfMRI測定の解析を実施した結果、Poly(I:C)群では脳大脳皮質領域での機能的連絡に異常が認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
覚醒下でのPETおよびfMRI測定それぞれから抽出されたPoly(I:C)群での脳機能異常領域の関連性について解析を続け、また、その異常領域における神経細胞数やミクログリア活性について免疫組織化学染色による観察を進めている。
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Causes of Carryover |
今年度実施予定であった妊娠期雌マウスのPoly(I:C)投与後の血中サイトカイン類の変化について測定用の実験器具類、試薬を購入する予定であったが、今年度中に実験に必要な個体数が生産出来なかったため、次年度に繰越した。
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