2018 Fiscal Year Research-status Report
ダイアモンド・ブラックファン貧血の発症機構の解明と新規治療標的分子の同定
Project/Area Number |
17K10093
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
土岐 力 弘前大学, 医学研究科, 講師 (50195731)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
種田 晃人 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (70332492)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 赤血球造血 / ダイアモンド・ブラックファン貧血 / TP53 / リボソームタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイアモンド・ブラックファン貧血 (DBA) は稀な遺伝性骨髄不全症のひとつであり、赤血球造血不全と奇形によって特徴づけられる。原因のほとんどは、リボソーム・タンパク質 (RP) 遺伝子のヘテロ変異であることが知られており、これまでに15種類のPR遺伝子で変異が報告されている。しかし、RP遺伝子で説明がつくのは DBA全体の60%ほどで、残りの症例については原因が不明なままである。 本研究の目的は DBA にみとめられる変異の機能解析と発症にいたる病理学的経路を明らかにすることである。平成29年度の実施計画は 1. DBAモデル細胞株の作成。2. 作成した細胞株を用いた新規原因候補遺伝子の機能解析とパスウェイ探索。 3. 赤芽球勞発症における TP53活性化の下流にある標的遺伝子群の同定の3 点である。また平成30年度以降の計画は 4. DBA モデル iPS 細胞の樹立。5. モデル細胞を用いた RNA シーケンス解析による発現プロファイルの蓄積。6. RP 遺伝子不活性化後に引き起こされるエピジェネティックな変化の追跡。である。 昨年度は計画にしたがって研究を進め、新たなDBAモデル細胞株の作成を試みた。次の目的である新規原因候補遺伝子の機能解析とパスウェイ探索に進むべく、野生型細胞株との遺伝子発現の比較および、新らたに樹立したモデル細胞株の赤芽球系への分化誘導などを試みている。新たに見つかった DBAの原因遺伝子 CECR1は、これまで報告されているRP遺伝子とは異なりホモの変異により発症する。この遺伝子はアデノシンデアミナーゼ2をコードしており、この遺伝子機能を欠いた細胞株を作成することが、DBAの表現型がいかにして形成されるかを知ることの大きな手がかりになると考えている。現時点では、新たなモデル細胞を用いて、TP53活性化の下流と CECR1欠損の下流にある標的遺伝子群の同定試みているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度においては、DBAにみとめられる変異をゲノム編集で導入したDBAモデル細胞株を樹立し、予想された表現型のうちrRNAの成熟障害を確認した。しかし、赤血球型への分化 誘導実験では野生型と異なる表現型はえられたものの、アポトーシスの亢進などはみとめられていなかった。本年度は、臍帯血由来の赤芽球系前駆細胞の性格を有する細胞株に、Cas9を安定に発現する株を樹立することができた。従来、ゲノム編集の困難な細胞株であったが、これを用いて新規の DBAモデル細胞株を作成することに成功した。この細胞では赤芽球系特異的な遺伝子の発現が障害されることを確認できたことから、次年度以降従来の細胞の比較を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の申請時に提出した平成30年度以降 の計画は「4. DBAモデルiPS細胞の樹立」「5. モデル細胞を用いた RNA-Seq による発現プロファイルの蓄積」 「6. RP遺伝子不活性化後に起こるエピジェネティックな変化の追跡」である。iPSの変わりに臍帯血由来赤芽球系細胞株を用いて、今後も計画に沿って研究を進める予定である。
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