2017 Fiscal Year Research-status Report
慢性肉芽腫症における肉芽腫形成の機序の解明と新規治療薬の開発
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17K10104
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
重村 倫成 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (70623916)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 慢性肉芽腫症 / 活性酸素 / 保因者 / 肉芽腫 / 好中球 |
Outline of Annual Research Achievements |
X連鎖性の慢性肉芽腫症の保因者では、活性酸素を産生する食細胞と活性酸素を産生しない食細胞が混在するが、約半数は活性酸素の産生能があることから易感染性を示さない。しかし保因者でも肉芽腫を始め多くの免疫異常を経験し、また文献上でも報告がある。これらの免疫異常に活性酸素産生能のない細胞が関与していることが予想される。 そこでまず、好中球の成熟障害が与える免疫や炎症における影響の分析のため、モザイク現象を認めた好中球減少の代表的な疾患である重症先天性好中球減少症(SCN)で解析を行った。SCNでは重度の好中球減少のため幼少期から易感染性を示し、75-80%に好中球エラスターゼをコードするELANE遺伝子の変異を認める。ヘテロ接合性変異より発症することから常染色体優性遺伝形式をとり、その浸透率は極めて高いことが知られている。発端者は生後から重症の好中球減少症を認め既報告のELANE遺伝子変異(c.607G>C)からSCNと診断した。母親にも同一の変異を認めたが、易感染性はなく末梢血好中球数も正常であった。 母親の末梢血を分離し変異の割合を解析したところ、単球、リンパ球、血液前駆細胞で約4-5割、爪の細胞では2割程度の変異アリルを認めた。一方で好中球には変異アリルを認めなかった。さらに無症候性母親の末梢血からiPS細胞を作製したところ、変異クローン以外にも正常のクローンが存在することを確認できモザイク現象を証明した。 次に、樹立した変異有/無iPS細胞の好中球への分化誘導能を検討した。変異無iPS細胞からの好中球への分化は保たれていたが、変異有iPS細胞からの好中球への分化は著しく減弱していた。末梢血の好中球数とこれらの結果から、X連鎖性の慢性肉芽腫症の保因者とは異なり、変異有クローンは正常の好中球分化に影響を与えないことが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
好中球分化における病態を重症先天性好中球減少症の責任遺伝子であるELANE遺伝子変異をモザイクにて認めた症例で解析することで、当初は予定していなかった解析ができたため。また慢性肉芽腫症患者・保因者解析のための予備実験となり、おおむね予定通り研究は進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
X連鎖性の慢性肉芽腫症、保因者での血液を用いた解析を行っていく。好中球殺菌蛋白(顆粒)、Peroxisome Proliferator-Activated Receptor γ(PPARγ)発現を活性酸素産生能有/無で比較検討する。 患者、保因者でiPS細胞を樹立する。保因者から樹立したiPS細胞から食細胞へ分化誘導を行い、活性酸素産生有/無クローンを作成する。同様にこれらを比較検討する。PPARγ添加下、好中球分化を行い活性酸素産生量の変化、殺菌蛋白の変化を解析する。
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