2018 Fiscal Year Research-status Report
APCおよびPSによる第VIII因子制御機構の解明および新規血友病製剤への応用
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17K10125
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
武山 雅博 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (30572010)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野上 恵嗣 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (50326328)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 第VIII因子 / プロテインS / 活性型プロテインC |
Outline of Annual Research Achievements |
凝固第VIII因子(FVIII)は凝固反応において必須であり、欠乏により血友病Aを起こす。治療に用いるFVIII製剤は半減期が短く頻回な投与が必要である。一方、FVIIIは活性型プロテインC (APC)及びプロテインS (PS) により不活化されるが、その不活化機序は完全には解明されていない。本研究ではFVIIIとAPC/PSの結合部位を同定し不活化機序の解明を行うことを目標としており、平成30年度は平成29年度の研究を継続し、以下の3つの研究を進める予定であった。① FVIII重鎖上のAPC結合部位の同定を行う。②FVIII重鎖・軽鎖上のAPC/PS両結合部位のアミノ酸配列を変異させたFVIIIを作製し、APC/PSによるFVIII不活化機序の解明を行う。さらに、新規FVIII製剤としての有用性を検討する。 ①については、FVIII A2ドメインのアミノ酸残基400-429がAPC結合部位である可能性を想定していた。昨年度は、ELISAにてDEGR-APCとFVIII A2の結合が、400-409, 409-420および420-429の各ペプチドにより抑制されるかを検討したが、いずれのペプチドも抑制しなかった。本年度は、SPR-assayで、FVIII A2とAPCの結合を検討した。②については昨年度、FVIII A2ドメインアミノ酸残基488~490およびC2ドメインアミノ酸残基2239をアラニンに変異させたFVIIIを作成した。本年度は本変異VIIIを用いて解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①:SPR-assayを用いて、FVIII A2ドメインとDEGR-APCの結合性を検討し、FVIII A2ドメインは約Kd 30nMでDEGR-APCと直接結合した。これまでの研究で、FVIII上のAPC結合部位はFXとoverlapしている可能性が示されており、FX結合部位は、アミノ酸残基400-409であると報告した(Takeyama et al., Thromb and Haemost. 118, 830-841,2018)。そこで、FVIII A2ドメインのアミノ酸残基400-409, 409-419, 420-429の配列から、同部位のペプチドを作成した。SPR-assayを用いて、3種類のペプチドとDEGR-APCの結合性を検討した。420-429ペプチドのみKd 約300 uMでDEGR-APCと結合することがわかった。これらの結果から、APCの結合部位がFVIII A2ドメイン上にも存在する事を初めて証明した。②:FVIIIアミノ酸残基S488, S489, R490およびK2239をアラニンに変異させたFVIII(S488A/S489A/R490A, K2239A, S488A/S489A/R490A/K2239Aの3つ)を作成した。本変異FVIIIにPSを濃度依存性に添加してXa生成試験を行った(PS非添加時のXa生成量を100%と設定)。wild typeはPSの濃度依存性にXa生成は約6%まで低下した(PS 500nM)。S488A/S489A/R490AのXa生成量は29%まで、K2239Aのそれは9%まで低下した。しかし、S488A/S489A/R490A/K2239AのXa生成量は26%までしか低下せず、S488A/S489A/R490A/K2239AはPSにより不活化されない、すなわちPSとの結合性が低下している可能性を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
①について:FVIII重鎖上のAPC結合部位がアミノ酸残基420-429である可能性が示されたため、さらに結合部位の同定を、同部位のアミノ酸をアラニンに変異させた変異FVIIIを作成し、ELISAやwestern blotting assayを用いて進めていきたい。
②について:目的としたPS結合部位を変異させたFVIIIを作成に成功し、本変異FVIIIを用いてFVIII不活化の機序の解明をすすめており、今後、SPR-based assay等を用いて、機能解析を進めていきたい
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Causes of Carryover |
次年度に変異FVIIIを作成予定であり、その実験費用に充てるため次年度に繰り越した。
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