2018 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム・エピゲノム解析による難治性神経芽腫の病態理解とリスク分類法・治療法の開発
Project/Area Number |
17K10131
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Research Institution | Research Institute for Clinical Oncology, Saitama Cancer Center |
Principal Investigator |
大平 美紀 埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), 臨床腫瘍研究所, 主幹研究員 (20311384)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 神経芽腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、多様な臨床像を示す神経芽腫について最適な治療戦略を構築するため、神経芽腫組織の網羅的ゲノム・エピゲノムデータのメタオミックス解析を行い、悪性サブタイプに強く関連する分子的特徴を明らかにすることを目的としている。平成30年度は、化学療法抵抗性で診断後2年以内に死亡したいわゆる超高リスク群について、これまでに収集した臨床情報をもとに分子生物学的特徴を抽出した。1995年から2014年までに国内で神経芽腫と診断されMYCNコピー数解析、DNAプロイディ解析による中央分子診断と、アレイCGHによる染色体網羅的ゲノムコピー数異常解析データを取得した610症例を対象に、予後フォローアップにより2年以内の死亡が確認された症例は92例であった。単変量解析(Logrank-test)により、これら超高リスク群に相関する臨床因子は骨転移+、骨髄転移+、肝転移+、高フェリチン、高LDHであり、腫瘍DNAの特徴としては、MYCN遺伝子増幅+、diploidy、1p loss、17q gainであった(p<0.05)。MYCN増幅+の超高リスク症例ではALK変異を有する2例は特に治療抵抗性であった。一方、MYCN非増幅の超高リスク群(41例)では、通常MYCN増幅例で高頻度に見られる1p lossが強く相関していたほか、12q領域の増幅を持つ症例、一部の染色体にchromothripsis様の不安定な領域が見られる症例などが見られた。 網羅的メチロームとの相関についても、超高リスク症例との相関を抽出した。145例の神経芽腫のメチロームパターンを教師なしクラスタリングすると、予後の異なる4つのサブクラスターに分類されたが、MYCN非増幅の超高リスク症例は、そのうちの1つのサブクラスターに集積した。今後これらのサブクラスターについて遺伝子発現データを加え、特徴的な遺伝子を抽出する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析対象症例の臨床情報を更新し、超高リスク症例について各マーカーの予後関連解析を行った。ゲノムコピー数、60K遺伝子発現データ、全エクソーム解析(WES)による遺伝子変異データ、450Kメチロームデータのメタオミックス解析を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
エピゲノム解析とゲノム解析、臨床情報を統合することにより、超高リスク神経芽腫に特徴的なゲノム、エピゲノム異常の特徴が洗い出された。次のステップとして予後不良因子であるテロメラーゼ遺伝子発現をはじめ、網羅的遺伝子発現解析データをサブクラスターに当てはめ、高リスク症例に特徴的な遺伝子の絞り込み、検証、解析を行う。
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Causes of Carryover |
物品費は遺伝子発現アレイ解析試薬の購入を計画していたが、現有のアレイを使用することで、次年度に物品費を回すことができた。また、平成30年度は2回の海外学会での成果発表と国内学会2回の発表が遠隔地であったため、旅費に多くを割き、次年度にデータ検証用の物品費を回すこととした。
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