2017 Fiscal Year Research-status Report
BMCC1によるゲノム安定維持とその神経芽腫悪性化防止への関与
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17K10132
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Research Institution | Chiba Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
巽 康年 千葉県がんセンター(研究所), がん予防センター・腫瘍ゲノム研究室, 研究員 (00450578)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 神経芽腫 / アポトーシス / DNA損傷 / 転写制御 / タンパク分解制御 / ゲノム不安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
進行した腫瘍が難治性を示す「神経芽腫の悪性化機構の理解」を目指し、その予後不良症例で発現低下する癌抑制因子BMCC1が、ATMのリン酸化を促進しDNA損傷応答を活性化してゲノム安定性を担保する分子基盤の解明を目的として、以下の2項目について推進した。項目1. BMCC1によるATMリン酸化促進メカニズムの解明。本項目では、E2F1-BMCC1-ATMの正のフィードバック制御について解明することを最終目的としている。平成29年度は、その手始めとして、神経芽腫細胞株SK-N-AS細胞に対して抗癌剤(cisplatinおよびVP-16)を用いてDNA損傷による細胞死を誘導した際に、BMCC1はE2F1依存的に発現亢進されること、またアポトーシス後期の細胞ではタンパク分解制御を受けることを発見し、その分子制御メカニズムを明らかにした。さらに、BMCC1の分子機能を解明する手がかりを得る目的で、shRNAを用いてBMCC1を発現抑制したSK-N-AS細胞株を樹立し、マイクロアレイを用いて網羅的な遺伝子発現解析を行なった。項目2. BMCC1の発現低下を介したゲノム不安定性誘導と神経芽腫悪性化機構の解明。本項目では、先行研究で行った96症例の難治性中間予後群(ステージ3又は4かつ MYCN非増幅で、ゲノム維持機構の破綻がドライバーと考えられる70症例)のゲノム解析データーを用いて、その低発現が有意に予後不良性を示したBMCC1の関与について解明することを最終目的としている。平成29年度は、ゲノムデーターの解析からBMCC1遺伝子領域の欠失を持つ症例を見出し、これは体細胞変異が多い表現型を示すことを明らかにした。以上の研究成果の一部は、第76回日本癌学会学術総会で報告するとともに、学術論文として投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
項目1. の『BMCC1によるATMリン酸化促進メカニズムの解明』については、上記のようにDNA損傷後の神経芽腫細胞株におけるBMCC1の発現制御機構の解明が進んでおり、学術論文の早期発表を目指している。さらに、DNA損傷後のBMCC1の役割について、マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析より絞り込みつつある。項目2.の『BMCC1の発現低下を介したゲノム不安定性誘導と神経芽腫悪性化機構の解明』についても、上記のように、先行研究で行ったゲノム解析データーをもとに96症例の難治性中間予後群の分類をすすめており、学術論文の早期発表を目指している。さらに、これら情報とBMCC1の関係についても明らかにしつつある。以上、本研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析より絞り込んだパスウェイおよび下流の候補遺伝子を手がかりとしてBMCC1の分子機能にせまり、そのATMリン酸化促進メカニズムを明らかにしていく。あわせて、96症例の難治性中間予後群のゲノムデーターおよびBMCC1ノックアウトマウスを用いた臨床レベルと個体レベルの解析から、神経芽腫の悪性化におけるBMCC1の発現低下の意義を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
平成29年度は、旅費を支出しなかったため、少額の繰越金が生じた。 繰越分は次年度の消耗品購入代金として充てる。
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Research Products
(3 results)