2018 Fiscal Year Research-status Report
小児肝移植後EBウイルス持続感染に関する分子生物学的診断・治療アルゴリズムの開発
Project/Area Number |
17K10134
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
福田 晃也 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 臓器移植センター, 医長 (60455417)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阪本 靖介 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 臓器移植センター, 医長 (00378689)
笠原 群生 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 臓器移植センター, センター長 (30324651)
今留 謙一 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 高度感染症診断部, 部長 (70392488)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | EBウイルス / 小児肝移植 / 感染症 / 分子生物学的診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
小児肝移植後にEpstein-Barr Virus (EBV) に初感染する割合は約60%でEBVゲノム数の高値が持続することが多く,潜伏感染のため抗ウィルス薬の効果はなく致死率の高い移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)を発症する可能性がある.PD-1(programmed cell death-1)受容体は活性化 T 細胞の表面に発現し,リガンドである PD-L1は通常抗原提示細胞の表面上に発現する.PD-1,PD-L1は,T細胞応答を抑制もしくは停止させる共同抑制因子として働く免疫チェックポイント・タンパク質である.EBV感染細胞が表出するPD-L1の発現量を測定することによりPTLD発症のhigh risk群を同定できる可能性がある. 重症複合型免疫不全症のスクリーニング検査にもちいられているTRECs(T-cell receptor excision circles)およびKRECs(kappa deleting recombinationexcision circles)を,それぞれTリンパ球およびBリンパ球の分化・増殖状態のbiomarkerとして用いる.そこで,PTLDを発症するEBV自体の腫瘍化の素因と宿主であるレシピエント側の免疫能の素因として以下の因子を解析しEBVゲノム数高値の原因の解明,PTLD発症high risk群を特定する治療アルゴリズムを構築することを目的として本年度は以下の2点について重点的に検討を行った. 1)PD-1及びPDL-1に関する検討:PTLD発症例も含め現在外来follow up中の患児のEBV感染細胞表面へのPD-L1の発現の有無に関して検討した. 2)胸腺からのT細胞の新生を簡便に診るためにFCM法を用いた検討を導入した. 3) TRECs/KRECsの発現レベルを検討した.TRECsの厳密な検討は1-2日用するため,簡便で迅速な診断とは言えない.そこでFCM法を利用してTRECsの結果と相関し,かつ簡便で迅速に解析できるマーカーとしてCD3+ / CD4+ / CD31+ / CD45RA+の細胞を検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度には51例の小児肝移植症例に対してEBV-PCR検査によるEBV感染に関するモニタリングを行った.この内移植後リンパ増殖性疾患を発症した症例は認めなかった. 1) T 細胞応答を抑制もしくは停止させる共同抑制因子として働く免疫チェックポイント・タンパク質であるPD-1(programmed cell death-1),PD-L1のTリンパ球表面への発現亢進が,EBV感染初期の段階で認められた症例を検出した.本症例において活性化CD8細胞の応答が現れているにもかかわらずEBV感染を認め,PD-1,PD-L1の発現亢進により機能しなくなったかは今後の研究にて確認する必要がある. 2) 肝移植時の患児のリンパ球の活動性の指標として,TRECs(T-cell receptor excision circles)およびKRECs(kappadeleting recombination excision circles)が,それぞれTリンパ球およびBリンパ球の分化・増殖状態のbiomarkerとなるか否かを検討するに当たり,臨床的には迅速さが要求されることが課題であった.すなわち,TRECsの厳密な検討は1-2日用するため,簡便で迅速な診断とは言えない.そこでFCM法を利用してTRECsのかつ簡便で迅速に解析できるマーカーとしてCD3+ / CD4+ / CD31+ / CD45RA+の細胞を検討結果と相関を検討した.FCM法を利用してTRECsよりも簡便で迅速に解析できるマーカーとしてCD3+ / CD4+ / CD31+ / CD45RA+の細胞を検討結果,大まかであるが,TRECsの代替として用いることができることを肝移植後の患児末梢血検体で示された. 上記の新たな知見がえられたことから,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
前述のFCM法を利用してTRECsよりも簡便で迅速に解析できるマーカーとしてCD3+ / CD4+ / CD31+ / CD45RA+,PD-1,PD-L1の発現と,EBV感染との関連を示唆する知見が得られてきているので,本研究におけるEBV易感染性の指標候補としてこれらの検査がbio-markerとしての有用性が得られる可能性が高いと考えられる. 本研究の昨年度の方針を維持して追加症例を重ねていくことで予想されたアルゴリズムの策定に結びつく結果が得られる可能性が高いと評価しているので引き続き新規小児肝移植症例での検討を重ねていく予定である. また,30年度にはEBV感染リンパ球の腫瘍化のしやすさと関連があるとされているmicroRNAのうちこれらの腫瘍化に関与の可能性が高いものにBARTs (BamHI Arightward transcripts)およびBARFs (BamHI A rightward frames)であり,これらの発現パターン解析によりEBV自体の発癌のポテンシャルを予測できる可能性があるためこれらの発現解析を行う計画である.
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Causes of Carryover |
必要試薬の購入に関して不足があり,次年度においてこの残金を試薬の購入の費用として使用する予定です.
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