2017 Fiscal Year Research-status Report
遺伝性抱合型ビリルビン血症に対し次世代シークエンサーを用いた病態探索と臨床応用
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17K10148
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
戸川 貴夫 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 臨床研究医 (10792814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 伸治 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (00281824)
杉浦 時雄 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (10381881)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 遺伝性抱合型高ビリルビン血症 / Dubin-Johnson症候群 / 新生児胆汁うっ滞 / 遺伝子解析 / 次世代高速シークエンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,遺伝性抱合型高ビリルビン血症である新生児Dubin-Johnson症候群(DJS)とRotor症候群を,分子遺伝学的に診断する手法の確立を目指すものである.分子遺伝学的な方法は,次世代高速シークエンサーによる網羅的遺伝子解析とバイオインフォマティクスを用いる. 平成29年度のおもな研究目標は,①新しい遺伝子パネルを作成し,網羅的遺伝子解析の手法を確立,②遺伝子診断のついた患児から質の高い臨床データを収集・解析,である.①について,平成29年度に61種の候補遺伝子を含む遺伝子パネルを新たに作成した.次世代高速シークエンサーであるIon PGM systemを使用して,この遺伝子パネルが機能することを確認できた.このことは,本研究の第一歩である解析系の立ち上げに成功したことを意味する.また本研究に必要な検体は全国から収集され,現在30例以上の遺伝子解析が終了した.そのため,前述の②に取り組むことが出来ている. 本年度の研究成果の一部と過去に蓄積されたデータを踏まえて,論文『Clinical, Pathologic, and Genetic Features of Neonatal Dubin-Johnson』をThe Journal of Pediatrics誌へ投稿し,採択された.本論文は,希な遺伝性疾患である新生児DJSの臨床経過,肝臓病理,遺伝子変異についてまとめたものである.この疾患は生後2ヶ月ごろ直接ビリルビンが最大となり,胆道閉鎖症の鑑別疾患となることが分かった.また,新知見として,黒色肝はDJSに特徴的とされていたが,新生児期には黒色肝が見られない症例も多く存在することが判明した.さらに,きわめてまれな疾患とされたDJSは,病原性遺伝子変異の保因率からおよそ2万3千人に1人の頻度で見られる可能性があることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,新生児Dubin-Johnson症候群とRotor症候群を次世代高速シークエンサーとバイオインフォマティクスを用い,分子遺伝学的に診断する解析手法の確立を指向する. 平成29年度の研究計画は,①解析対象遺伝子を含めた新しい遺伝子解析パネルを作成,②対象例の収集,遺伝子解析実験,データ解析,③肝臓病理組織について検討,である.我々は①に対して,新生児,乳児期の遺伝性胆汁うっ滞の原因となる疾患の責任遺伝子61個を候補とした.この61遺伝子に対してIon AmpliseqDesignerを使用して遺伝子パネルをデザインした.陽性対照に使用して,この遺伝子パネルが機能するかを確認し,成功した.②について,全国から遺伝子解析対象が順調に集まっている.また,遺伝子解析は滞りなく継続されデータ蓄積が進んでいる.③について,肝臓病理組織の収集については現在不十分である.引き続き研究協力施設と密に連携をとり,解析対象患者の肝臓組織について収集,解析をすすめる計画である. 以上から本研究課題の平成29年度の進捗状況はおおむね順調であると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,当初の研究計画に大幅な変更は必要ない.平成30年度は遺伝性抱合型高ビリルビン血症の疑われる患者に対して,次世代高速シークエンサーを使用して遺伝子解析を継続する.全国から対象患者の募集を継続しつつ,遺伝子解析を行った対象の臨床情報について詳細な検討を行う. 解析データの中間的なまとめとして,日本小児科学会学術集会,日本肝臓学会学術集会,小児肝臓研究会などで研究発表を行い,対象患者のリクルートを推進する.並びに,国際学会にて発表を行う計画である.
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Causes of Carryover |
平成29年度予算を予算通りに執行したはずのところ,一部決済において会計の間違いのため結果293円の残金が生じた.この残金は平成30年度の予算に組み込み,研究計画の大幅な修正をする必要なく執行できるものと考えている.
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Clinical, Pathologic, and Genetic Features of Neonatal Dubin-Johnson Syndrome: A Multicenter Study in Japan.2018
Author(s)
Togawa T, Tatsuki Mizuochi, Tokio Sugiura, Hironori Kusano, Ken Tanikawa, Takato Sasaki, Fumio Ichinose, Seiichi Kagimoto, Takahisa Tainaka, Hiroo Uchida, Shinji Saitoh
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Journal Title
The Journal of Pediatrics
Volume: -
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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