2018 Fiscal Year Research-status Report
ポドサイトのミトコンドリア機能を標的としたネフローゼ症候群の新規治療戦略の構築
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17K10154
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
阿部 祥英 昭和大学, 医学部, 准教授 (10384447)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ポドサイト / ネフローゼ症候群 / アディポネクチン / 小児 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々の研究目的の一つには、免疫抑制薬や抗サイトカイン薬によるミトコンドリアの機能改善がネフローゼ症候群の新たな治療戦略になることを呈示することがある。平成29年度、ミトコンドリア機能に作用する物質のうち、アディポネクチンに着目し、ステロイド反応性ネフローゼ症候群患児の発症時、蛋白尿消失直後、寛解期におけるその値を測定したところ、発症時、蛋白尿消失直後はアディポネクチン値が高く、その分画が変動することを見いだした。 そこで、平成30年度は、ステロイド反応性ネフローゼ症候群患児の例数を蓄積したほか、対照群を設定し、ステロイド反応性ネフローゼ症候群患児の各病期のアディポネクチン値とその分画の推移を対照群と比較した。 その結果、ステロイド反応性ネフローゼ症候群患児の各病期のアディポネクチン値はいずれも対照群の値よりも高値であった。また、アディポネクチン分画のうち、高分子量の値も各病期のいずれも対照群の値よりも高値であった。さらに、総アディポネクチン値に占める各分画の割合にも違いが見られ、蛋白尿消失直後の高分子量の割合と発症時の中分子量の割合が高値であった。つまり、ステロイド反応性ネフローゼ症候群において血清アディポネクチン値やその分画は病期により変動するので、それらの変動は蛋白尿の出現と関連している可能性が示唆された。 動物実験において、アディポネクチンはポドサイトに作用して蛋白尿や活性酸素の産生を抑制することが示されている。我々が得た上記の知見は、ステロイド反応性ネフローゼ症候群患児において、アディポネクチンがポドサイトに保護的に作用していることを示唆している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度は、ポドサイトのミトコンドリア機能の障害因子がミトコンドリア機能に実際に与える細胞生理学的影響を評価することを計画していた。しかし、ポドサイトのミトコンドリア機能を改善する可能性がある分子であるアディポネクチンに着目し、ネフローゼ症候群患児で実際に病態と関連するかを見いだすことを優先したため、当初の計画通りには研究が進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、ポドサイトのミトコンドリア機能の障害因子が与える影響を、免疫抑制薬が改善するかを評価する予定である。これまでの検討で、ポドサイトのミトコンドリア機能を改善する可能性がある分子としてアディポネクチンが候補に挙がった。アディポネクチンは免疫抑制薬ではないが、免疫抑制薬に加えて検討を進める。研究課題である「ポドサイトのミトコンドリア機能を標的としたネフローゼ症候群の新規治療戦略の構築」を進める上でも一助になる可能性がある。
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Causes of Carryover |
平成29年度に引き続き、「ネフローゼ症候群患児におけるミトコンドリア機能の尿中バイオマーカーの確立」が預手通りに進んでいないため、検体採取に関わる費用や、測定に必要なキット購入に使用する。
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Research Products
(1 results)