2018 Fiscal Year Research-status Report
抗酸化防御機構の腎局所における活性化による腎障害軽減の検討
Project/Area Number |
17K10155
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
新村 文男 東海大学, 医学部, 准教授 (30282750)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 酸化ストレス / 抗酸化防御機構 / 腎障害 / シクロスポリン / コンディショナルターゲティング / 近位尿細管 / Keap1 / Nrf2 |
Outline of Annual Research Achievements |
Keap1はNrf2と複合体を形成してNrf2の分解を促進するため、Keap1の不活化はNrf2の分解を抑制することとなり、豊富に存在するNrf2は種々の抗酸化防御作用を有する一連の遺伝子発現を増強することが期待される。本研究は腎尿細管における細胞特異的なKeap1の不活化が腎障害の軽減に結び付く可能性を探ることを目的としている。具体的には、近位尿細管(おもに近位直尿細管)特的にKeap1を不活化したマウス(CKOマウス:遺伝子型は[Keap1(flox/flox), KAP-Cre(+)]、n=10)にシクロスポリンを投与し、Keap1/Nrf2系の下流にある抗酸化防御機構に関与する遺伝子発現、および、腎障害に関連する遺伝子発現を検討した。対照群としては野生型マウス(WTマウス:遺伝子型は[Keap1(WT/WT), KAP-Cre(-)、n=10]を用いた。腎臓におけるKeap1発現(定量PCRによる)は、WTマウスで1.32±0.26、CKOマウスでは0.71±0.06と有意にCKOマウスにおいて低くなっていることが確認された(Mann Whitney検定、p=0.0005)。Keap1/Nrf2系の下流にある抗酸化防御作用に関連したHmox1の腎での遺伝子発現は、WTマウスで0.229±0.032、CKOマウスで0.873±0.542とCKOマウスにおいて増強している傾向を認めたものの、データのばらつきが大きく、統計的な有意差はなかった(Mann Whitney検定、p=0.089)。腎障害を反映するKim1の発現はWTマウスで0.104±0.025、CKOマウスで2.27±2.13となり、大きなバラツキを認め有意差はなかったものの、むしろCKOマウスでKim1発現が強い傾向を認め、尿細管でのKeap1不活化による腎障害の軽減効果は認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現時点では、尿細管特異的にKeap1を不活化した場合に、その下流にあるHmox1の発現が亢進の傾向を示すことが確認され、その結果として腎障害が軽減されることが期待されたが、Kim1の発現はむしろ亢進しており、腎障害は軽減されておらず、むしろ増強しているようにもみえた。予想された結果と異なっているが、その再現性についての確認が必要と考えている。また、シクロスポリン投与以外の腎障害モデルとして尿管結紮モデルなどを予定していたが実施に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
シクロスポリン投与による腎障害において尿細管特異的にKeaa1が不活化されることの影響の検討については、再現性についての確認が必要と考えており、さらに検討を重ねる予定である。また、シクロスポリン投与以外の腎障害として尿管結紮モデルの作成を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
定量PCRによる遺伝子発現解析において、以前の研究に用いていたプライマーセットの残余分を用いることができたため、一部経費がかからずに済んだ点が関与していると考えます。今年度においては新たに購入する必要が生ずることが予想されますので、そのための費用の一部になるものと考えています。
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