2017 Fiscal Year Research-status Report
低出生体重児のストレス反応関連遺伝子DNAメチル化の複合的変化と精神行動発達
Project/Area Number |
17K10190
|
Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
河野 由美 自治医科大学, 医学部, 教授 (50243390)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | メチル化 / 早産 / ストレス反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
低出生体重児では注意欠如多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症 (ASD)に類似した行動発達の障害を高率に認める。その原因はいまだ不明だが、子宮内、新生児期の高度なストレスによるエピジェネティクスの関与も疑われる。ヒトのストレス反応には、グルココルチコイドレセプター(GR)遺伝子(NR3C1)のほかに、コルチゾール不活化酵素である11β- hydroxysteroid dehydrogenase 2遺伝子(11βHSD2) 、セロトニントランスポーター遺伝子(SLC6A4)などが関与していることが知られている。本研究では、この3つのストレス反応関連遺伝子のメチル化解析を行うことを目的とした。平成29年度は、1)先行研究「低出生体重児のストレス反応とGR遺伝子DNAメチル化解析」で使用した残余の保存試料を本研究に使用すること(対象数26名)、2) 研究機関で運用している「NICU入院児の検体バンク」の試料を用いること(目標対象数30名)、3)妊娠経過、在胎期間、出生体重の周産期情報、NICU入院期間中にみられる合併症、治療についての臨床情報を用いることについて、研究機関の倫理委員会の審査をへて承認をうけた。先行研究の保存試料のうち2名から本研究での使用の同意を得た。新たな対象については「NICU入院児の検体バンク」での試料保存を継続している。検体バンクでは、全血からリンパ球芽球を培養し保管することでより多くのDNAを抽出・保存することができている。また、次年度以降のメチル化測定にむけ、11βHSD2、SLC6A4の測定領域候補の遺伝子情報を解析し、11βHSD2 promotor, exon 1およびexon 5領域CpG、SLC6A4 promoter~exon 1領域 CpGを解析部位としてプライマー設計を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の対象は、研究機関で出生しNICUに入院する在胎33週未満または出生体重1500g未満の児であるが、同対象の臍帯血、本人血液を用いた、そのほかの臨床研究も計画・実施されている。そのため、新生児である対象の負担を減らし、効率よく試料を用いるため「NICU入院児の検体バンク」を先に立ち上げ、倫理審査をうけ承認を受けた。その承認後に本研究の実施について倫理審査をうけたため、本研究の開始がやや遅れる結果となった。「NICU入院児の検体バンク」には10名の対象の試料が保管されており、今後本研究での使用について同意を得て研究に用いていく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き同意を得た上で、新規症例の目標対象数まで試料の採取と保存を継続する。先行研究の保存試料の使用については、外来診療時に保護者に説明し同意を得る。NR3C1、11βHSD2、SLC6A4のDNA メチル化率測定のためのプライマーを作成する。解析対象数が20例に達した時点で、1回目のメチル化測定を行う。臍帯血およびNICU 退院後血液のそれぞれについてNR3C1、11βHSD2、SLC6A4の各CpGサイトのメチル化率を測定する。測定した対象の在胎期間、出生体重、NICU 入院中の合併症や治療などのライフイベントと3つの遺伝子のCpG 各サイトのDNA メチル化率の関係について統計学的手法を用いて検討する。
|
Causes of Carryover |
理由:対象に負担のない血液試料の採取と保管のため「NICU入院児の検体バンク」を立ち上げたのちに、本研究についての倫理審査の申請を行ったため、研究開始が遅れた。そのため試料の処理に用いる消耗品等の使用が少なくなった。メチル化解析は次年度以降とするため、必要な消耗品も次年度以降に繰り越すことにした。それにともない、人件費、旅費の支払いも不要となった。 使用計画:平成30年度には、対象数が増えることが見込まれる。20名以上の対象の試料が収集できた時点で第1回目のメチル化測定を行う予定である。このため消耗品物品、人件費の使用額の増加が見込まれる。
|