2017 Fiscal Year Research-status Report
低出生体重 (J-DOHaD) モデルを用いた早期介入を目指す先制医療の基礎研究
Project/Area Number |
17K10195
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
根本 崇宏 日本医科大学, 医学部, 准教授 (40366654)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | DOHaD / 先制医療 / エピゲノム / 成長ホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
本邦で増加する妊娠中の母親の体重増加不良により生じる低出生体重児への先制医療の基盤形成としてラットモデルを用いた基礎研究を遂行している。低糖質カロリー制限食摂餌ラットからの出生仔は出生体重が軽くその一部は成長が追いつかずに短体長低体重となる。この機序として仔ラットの血中メチオニンの低下とDNAのメチル化の低下によるmiR-322発現の増加、さらにこれにより生じる成長ホルモン受容体の発現低下が関与することを明らかにしてきた。メチオニンはS-アデノシルメチオニン (SAM) へと代謝され、SAMはDNAやタンパク質のメチル供与体になるため、メチル供与体補充による成長促進への効果を調べた。授乳中の母ラットあるいは出生仔へのメチルドナー食給餌では成長促進効果は見られず、追いつき成長促進作用はみられなかった。妊娠中の体重増加不良ラットにおける妊娠後期のメチルドナー補充の効果を調べたところ、成長が追いつかない短体長低体重ラットの割合が減じたため、現在これらラットの成長ホルモン関連因子の発現量を解析している。また胎仔の成長への影響をみるため、出産前日の胎仔を摘出し、胎盤重量や胎仔体重を調べ、胎仔成長に関与するインスリン成長因子-2 (IGF-2) の発現を解析している。 成長促進への十分な効果はみられなかったものの、ストレス負荷後の血中コルチコステロン濃度は、低出生体重ラットは高値維持するのに対し、出産直後の授乳母ラットへの1週間以上のメチルドナー補充ではストレス負荷後の血中コルチコステロン濃度が対照ラットと同程度まで低下した。一方、3日間など短期間の補充や離乳後の仔ラットへの補充ではこの効果はみられなかったことから、メチルドナーは極めて早期に一定期間補充することが重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
出生後のメチルドナー補充では成長促進への十分な効果は見られなかったが、妊娠後期の母への補充では効果がある結果が得られたので、今後より早期、より短期の効果について検討を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
授乳母へのメチルドナーの補充では成長促進への効果がみられなかったが、高脂肪負荷などの環境のミスマッチによる耐糖能異常あるいはストレス暴露に対するストレス応答に差が見られるか調べる。また、低糖質カロリー制限食の摂餌はF4世代まで出生体重が軽くなる影響が残るため、母へのメチルドナー補充によってなにが、どこまで回復できるか今年度以降継続して調べる。
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Causes of Carryover |
研究は概ね順調に遂行しているが、購入を希望した試薬が残高より高額だったため、次年度に残金を残し、次年度に購入することとしたため。
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