2018 Fiscal Year Research-status Report
Neurological Prognostic Prediction in relation with Brain Glycogen Metabolism and Neonatal Asphyxia: Biomarker Discovery and Clinical Application
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17K10196
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Research Institution | Tokoha University |
Principal Investigator |
杉江 秀夫 常葉大学, 保健医療学部, 教授 (60119980)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 新生児仮死 / 中枢神経後遺症 / 脳性麻痺 / 嫌気性解糖 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
新生児仮死は周生期の一定頻度で起こる事象である。重篤な神経後遺症として脳性麻痺などを含む中枢神経障害を残すことがあり、障害児医療を考えるうえで重要な、そして解決すべき課題である。本研究の予備研究を踏まえ、新生児仮死を経験しながら正常に発達する群(N群)と神経後遺症を残す群(A群)との間で、緊急時のエネルギー産生機構である嫌気性解糖に関わる酵素群の発現に、差異がないかを検討した。 特に嫌気性解糖の鍵となる酵素であるホスホリラーゼ遺伝子多型に注目した。本研究では:①この2群におけるホスホリラーゼ遺伝子多型の差異が神経予後を予測しうる新たなバイオマーカーとして有用かどうか、②遺伝子多型が低酸素下で脳エネルギー代謝にどのような影響を及ぼすのかを明らかにし、ホスホリラーゼ活性賦活作用のあるビタミンB6を脳保護目的のためのオプション治療として臨床応用へ展開する可能性についての研究基盤を確立することを目的としている。 本年度では新生児仮死を経験した対象症例の収集の継続と(現在40症例を検索中)、同意を得たうえで検体採取に際して侵襲の少ない頬粘膜、あるいは唾液を試料として収集した。得られた試料よりgenomeDNAを抽出し遺伝子多型の特定、臨床症状との比較検討、統計学的検討を継続している。また病態基盤の基礎的検討のためホスホリラーゼ遺伝子の複数の遺伝子多型を挿入したプラスミドDNAの作成を行い、HEK293細胞に変異プラスミドDNAを導入し、ホスホリラーゼ酵素活性の発現を検索し、定常の酸素下では活性に変わりがないことを確認した。今後は実験的低酸素状態下での酵素活性の発現状況について各遺伝子多型ごとに次年度検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までに約40名の対象者の分析を終了した。症例収集がやや遅れている事が研究計画が「やや遅れている」原因である。次年度ではさらに症例収集について配慮するとともに資料収集も併せて行ってゆく。 また嫌気性解糖に関わる鍵となる酵素はホスホリラーゼ以外にも脳に発現しており、今後検討をホスホリラーゼ以外の嫌気性解糖の酵素群にも広げる可能性もある。細胞レベルでは当該遺伝子の遺伝子多型を含むプラスミッドDNAの作成が終了した。今後病態基盤をHEK細胞を用いて低酸素状態での動態を観察する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果を基に、ホスホリラーゼ遺伝子多型、および嫌気性解糖に関わる酵素群の遺伝子多型を合わせて検討し、新生児仮死の予後を予測するバイオマーカーとして位置づけられるかを評価する。同時にその病態基盤を明らかにした後、ビタミンB6の臨床応用に展開するための基盤となる研究を行う。 成果によって、実際の新生児仮死脳に対するレスキューとして一つのオプションの治療として確立できるか調査を行う。
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Causes of Carryover |
症例数が予定より下回ったことと、PCの購入を行わなかったなどで実験に必要な消耗品の支出が若干少なかった。また旅費については学務の関係で外国への出張を取りやめたことにより、その分支出が次年度へと繰り越すこととなった。次年度では症例数の増加が期待されるのでその費用に充当する予定である。
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Research Products
(4 results)