2020 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of autoantibodies and anti-tumor antibodies produced by immune checkpoint inhibitors
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17K10239
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
室 慶直 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (80270990)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 悪性黒色腫 / 自己抗体 / 免疫関連有害事象 / 免疫チェックポイント阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の登場で切除不能メラノーマに対する治療の状況は一変した。しかし治療効果の予測因子は確立されておらず、一方で免疫関連有害事象(irAE)として自己抗体の出現さらには自己免疫疾患の発症が問題となる。今回の研究はICIによるirAEの予測マーカーおよび治療の効果予測マーカーの解明が目的である。これまでに、市販ELISAキットで測定可能な自己抗体の他にも、我々が開発した様々な既知の自己抗体の測定系を使用し、ICI治療患者の自己抗体について調べた結果、特異的な抗体は検出されなかった。そこで、メラノーマ培養細胞のタンパクを用いた免疫沈降およびMALDI-TOFによるタンパク質同定解析により、ICIがメラノーマに対して奏功したがirAEとして後に白斑を生じた多型紅斑を呈した症例の血清から、治療後に陽転化した自己抗体として抗Ro52抗体を同定した。 これまでの解析期間においてICI治療後の血清を取得できた25例中、上記症例以外に抗Ro52抗体が陽性であった症例は、治療前より抗体陽性ではあったものの、抗体価はICI治療後、ほぼ不変か下がっており、明らかな有害事象を認めておらず、1例については完全奏効を認めた。治療前より全身性の自己免疫疾患で認められる自己抗体が陽性である場合は、その抗体価の推移を追うことはirAEのモニターとして有用である可能性が示唆された。 他には間接蛍光抗体法やELISA、ウエスタンブロッティングの結果から、irAEが高頻度に誘導する新たな自己抗体は同定されていない。それに対して、これまで言われているように、機能障害を伴わないまでも甲状腺関連の自己抗体発現頻度は比較的高く、全身性自己免疫疾患のマーカー自己抗体をあまねくICI治療患者に測定することは、医療経済的にも問題があるかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
血清採取を追加できた症例について、免疫チェックポイント阻害薬の投与前と投与後において、血清中自己抗体の新たな出現の有無を間接蛍光抗体法とイムノブロット法を用いて調べた。明らかに新規の抗体が投与後に出現した症例は見当たらなかったが、投与前に何らかの抗体を所有していた症例については、一部の症例で抗体価の増強を認めた。必ずしも抗体価の上昇を認めない症例も多く、現在、治療効果との関連を検討中である。 当初の予定では、メラノーマ培養細胞株に特異的な自己抗体の発現症例を認めた場合、その対応抗原を同定する作業に入りたかったが、そのような症例が見いだせず、解析が行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、さらに症例を集め、より長期にわたる症例観察と血清の解析を行いたい。また、抗Ro52/60抗体が発見された本患者のメラノーマ腫瘍組織やirAEとしての紅斑や白斑の皮疹組織における3種の抗原;Ro52α, Ro52β, Ro60について、それらの“altered expression”(変調発現)の有無やその様式について調べ、irAEとしての自己抗体産生機構の解明に迫りたい。
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Causes of Carryover |
免疫チェックポイント阻害薬の副作用としての自己抗体産生は比較的短期間の使用後に抗体陽性となることを想定してきたが、現在まで目立った抗体産生が見られていない。臨床的に副作用の発症が使用後1年以上経過してからの症例も見られ、患者観察期間も以前より長期になったことより、検体採取期間を延長して解析を行いたく、未使用額が生じた。
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