2019 Fiscal Year Research-status Report
Effects of a novel antimicrobial peptide, AMP-IBP5, on wound healing
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17K10254
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
ニヨンサバ フランソワ 順天堂大学, 国際教養学部, 教授 (60365640)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ケラチノサイト / 抗菌ペプチド / 創傷治癒 / 皮膚再生 / 血管新生 / 皮膚感染症 / 繊維芽細胞 / マスト細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
皮膚には種々の抗菌物質が存在し、微生物感染から生体を守るために重要な働きをしている。これらの抗菌物質の中で、β-ディフェンシンやLL-37などが注目され、数多くの皮膚疾患の病態に関与することが知られている。近年、新規の抗菌ペプチドであるインスリン様成長因子結合タンパク質5由来抗菌ペプチド(AMP-IBP5)が報告された。しかしながら、AMP-IBP5の抗菌作用以外の免疫調節機能は詳細な検討はなされていない。そこで、平成29年~31年、AMP-IBP5の役割を解明するため、ケラチノサイト、線維芽細胞やマスト細胞における活性化、血管新生、創傷治癒などの機構を明らかにした。平成29年度は、AMP-IBP5は創傷治癒過程に関わるIL-8およびVEGF(血管内皮細胞成長因子)の産生を選択的に増加させ、ケラチノサイトの遊走能および増殖能を著しく増大させることがわかった。AMP-IBP5によるケラチノサイトの活性化は、Mas関連遺伝子(Mrgpr)X1~X4受容体とその下流であるMAPキナーゼおよびNF-κB経路が働いていることが明らかになった。平成30年度では、AMP-IBP5がLRP1受容体を介して、ヒト線維芽細胞の遊走能と増殖能を増強させることを見出した。また、体内では、AMP-IBP5が正常なマウスおよび糖尿病性潰瘍モデルマウスの創傷治癒を促進することがわかった。平成31年では、AMP-IBP5がMrgprX2受容体を介して、マスト細胞を活性化することによって、創傷治癒に貢献することを見出した。以上の結果は、AMP-IBP5は抗菌作用に加えて、創傷治癒に関わる細胞の活性化を通して創傷治癒の過程に貢献している可能性があることが示唆された。AMP-IBP5が難治性糖尿病性潰瘍の創傷治癒を促進することによって、皮膚再生、感染症や難治性創傷などの疾患の治療法へ応用できることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度~31年の計画の①AMP-IBP5刺激によるケラチノサイト、繊維芽細胞やマスト細胞からの血管新生因子の発現・産生、②AMP-IBP5に対する遊走作用と細胞増殖に及ぼす影響と③マスト細胞に対する作用とそのメカニズムを明らかにし、学術論文で発表した。さらに、AMP-IBP5の糖尿病性潰瘍モデルマウスの血管新生および創傷治癒促進に及ぼす影響を明らかにしたので(論文準備中)、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.IGFBP5欠損マウスの血管新生と創傷治癒機能障害の有無を確認するために、IGFBP5欠損マウスと野生型マウスを用いて、血管新生と創傷治癒を測定する。また、IGFBP5欠損マウスと野生型マウスの皮膚由来ケラチノサイトや繊維芽細胞の遊走能、増殖能と血管新生を誘導する因子(サイトカイン、ケモカインと成長因子)の産生を計測する。 2.AMP-IBP5と他の皮膚由来抗菌物質との相乗効果:ケラチノサイト, 繊維芽細胞, マスト細胞及び好中球をAMP-IBP5,ディフェンシン, LL-37, S100A7とAG-30/5Cで刺激し, これらの抗菌物質のサイトカイン, ケモカインと成長因子の産生, 遊走能と増殖等の機能に対する効果は相乗的或いは相加的であるかどうかを調べる。
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Causes of Carryover |
研究目的のより精緻な達成に向けて、期間延長を行い、次年度に投稿中の論文の追加実験を行いたいため、また学会に参加し研究成果発表を行いたいため。
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