2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K10257
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
照井 正 日本大学, 医学部, 教授 (30172109)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
葉山 惟大 日本大学, 医学部, 助教 (40647187)
岡山 吉道 日本大学, 医学部, 准教授 (80292605)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 慢性特発性蕁麻疹 / マスト細胞 / オマリズマブ / FcεRI / IgE |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性特発性蕁麻疹(CSU)患者血清中に、IgEに対する自己抗体(抗IgE抗体)や高親和性IgE受容体(FcεRI)α鎖に対する自己抗体(抗α鎖抗体) が検出されるが、これらの抗体の臨床的意義は明確ではない。CSU患者は抗IgE抗体であるオマリズマブに反応する群としない群があるが、これらの抗体とオマリズマブの治療効果の関係は明確ではない。本研究において我々はオマリズマブの治療において抗α鎖抗体がどのように関係しているかを調べた。CSU患者114名、Normal Control (NC)として健常者55名を対象とした。血清から精製したIgGを用いてELISAにより抗α鎖抗体濃度、抗IgE抗体濃度を測定した。IgE crosslinking-induced luciferase expression (EXiLE)法を用い、 CSU患者群とNC群の自己抗体のFcεRIの架橋能を測定し、それぞれを比較した。 ROC曲線を描き、FcεRIの架橋能のカットオフ値を算出し、CSU患者群をそれぞれの自己抗体によるFcεRIの架橋能の高値群と低値群に分け、オマリズマブの治療効果を比較した。EXiLE法による抗α鎖抗体のFcεRIの架橋能の測定では, CSU患者群の方がNC群よりも架橋能が統計学的に有意に高かった(P = 0.0002)。抗IgE抗体のFcεRI架橋能は, CSU患者群の方がNC群よりも有意に高かった(P < 0.0001)。オマリズマブの治療効果は、抗α鎖抗体によるFcεRIの架橋能高値群の方が低値群よりも統計学的に有意に治療効果が高く(P = 0.0029)、早期に効果が見られた。以上の結果から抗α鎖抗体によるFcεRIの架橋能がオマリズマブの治療効果の予測因子になり、FcεRIの架橋能が高値の群はCSUの病態に抗α鎖抗体が関与している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
慢性特発性蕁麻疹の患者の血清を集め、解析している。血清の解析は順調に進んでおり、ELISAによる測定法はほぼ確立している。患者群、健常群ともに十分な数は集まっており、自己抗体の解析の研究はおおむね順調に進んでいる。また、EXiLE法による抗α鎖抗体のFcεRIの架橋能の測定に関してもほぼ手技は確立しており、おおむね順調に進んでいる。しかし、オマリズマブの治療効果による解析は十分に進んでいない。理由としてはオマリズマブは平成29年3月から保険適応になったばかりであり、十分な患者数がまだいないことがあげられる。適応になる患者でも高価な薬剤であるため容易には使えず、十分な患者数を集めることが困難である。そのため統計学的有意差はでているものの、症例数が十分でないため、盤石なエビデンスを確立したとは言えない。また、患者数がまだ少ないため患者背景、臨床症状などのサブ解析が十分に行え得ていないのも今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き患者血清を集め、自己抗体の解析を継続する。EXiLE法による抗α鎖抗体のFcεRIの架橋能の測定に関してもほぼ手技は確立しているので、併せて症例数を拡大していく。オマリズマブの有効性の解析については有効群と無効群に分けて解析を継続する。症例数は増えてきているため、今後は蕁麻疹の重症度、罹病期間、皮疹の形状、抗ヒスタミン剤の効果などの臨床症状などに注目し、サブ解析を行っていく。
オマリズマブの投与後にFcεRIの発現が低下することから、血中に存在するIgEがFcεRIの発現に影響すると考えられるがその機序は不明である。本年度はマスト細胞のFcεRIの発現を誘導する因子を同定する。具体的には培養ヒト皮膚マスト細胞を用いて、蕁麻疹に関与する各種炎症性サイトカインなどの存在下と非存在下で細胞の培養を継続し、受容体の発現の程度を調べる。発現の解析は受容体特異的抗体を用いた蛍光染色にて行う。培養ヒト皮膚マスト細胞は日本大学医学部付属板橋病院皮膚科にて皮膚植皮術を行った患者の余った植皮片を提供いただき、培養する。 また我々は以前の研究でCSU患者の病変部位のマスト細胞でMrgX2が高発現していることを報告している。しかしMrgX2の発現を誘導している因子については分かっていない。上記のFcεRIと同様の系を用いてMrgX2の発現を誘導している因子を調べる。
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Causes of Carryover |
慢性蕁麻疹患者の血清は十分に集まったが、オマリズマブ使用群はオマリズマブが平成29年度から適応になったばかりであり、また高価な薬剤であるため十分な数が集まらなかった。少しずつ患者数は増えており、今後改善される見込みである。次年度は引き続きELISAによる測定を行うため、ELISA用試薬や標識用抗体の購入を行う。またマスト細胞の機能を測定するためのヒスタミンELISAキットやサイトカインのELISAキットの購入を行う。
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] 慢性蕁麻疹(CSU)患者における抗IgE自己抗体および抗FcεRlα鎖(α鎖)自己抗体の臨床的意義(第1報)2017
Author(s)
伊崎聡志, 豊島翔太, 西盛信幸, 柏倉淳一, 布村聡, 藤澤大輔, 畠田優子, 葉山惟大, 藤田英樹, 羅智靖, 照井正, 岡山吉道
Organizer
第66回日本アレルギー学会学術大会
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[Presentation] 慢性蕁麻疹(CSU)患者における抗IgE自己抗体および抗FcεRlα鎖(α鎖)自己抗体の臨床的意義(第2報2017
Author(s)
伊崎聡志, 豊島翔太, 西盛信幸, 柏倉淳一, 布村聡, 藤澤大輔, 畠田優子, 葉山惟大, 藤田英樹, 羅智靖, 照井正, 岡山吉道
Organizer
第66回日本アレルギー学会学術大会
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[Presentation] 慢性蕁麻疹患者と健常人の好塩基球における抗FcεRIα鎖抗体(CRA1)と抗IgE抗体刺激による反応性の比較2017
Author(s)
遠藤嵩大, 豊島翔太, 伊崎聡志, 西盛信幸, 藤澤大輔, 畠田優子, 葉山惟大, 藤田英樹, 羅智靖, 照井正, 岡山吉道
Organizer
第66回日本アレルギー学会学術大会
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[Presentation] 慢性特発性蕁麻疹(CSU)におけるマスト細胞の活性化機構2017
Author(s)
岡山吉道, 豊島翔太, 伊崎聡志, 藤澤大輔, 鐘ヶ江加寿子, 坂本朋美, 小野芳啓, 中村亮介, 西盛信幸, 遠藤嵩大, 照井正, 羅智靖
Organizer
第66回日本アレルギー学会学術大会
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