2017 Fiscal Year Research-status Report
免疫再構築症候群の皮膚病態形成におけるサイトメガロウイルス再活性化に関する検討
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17K10260
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
谷崎 英昭 大阪医科大学, 医学部, 講師 (90586653)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 免疫再構築症候群 / サイトメガロウイルス / 自然リンパ球 |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫再構築症候群 (Immune reconstituition syndrome、IRS)は、臨床症状が一過性に増悪する状態が観察され、すでに体内に存在している病原(例えばウイルスなど)に対し、回復された免疫機能が反応することで、炎症反応が増悪することの現れであると考えられている。原疾患が改善しつつあるのにも関わらず、時に重篤な状態に陥る各種ウイルスの再活性化とそれにともなって生じる全身症状については未だ不明な点が多い。皮膚症状を呈する症例は、GVHDもしくは重症薬疹治療時に生じるサイトメガロウイルス感染症、帯状疱疹、単純ヘルペス、結核、非定型抗酸菌症などが多く知られている。 免疫再構築症候群時の皮膚病態形成におけるサイトメガロウイルス再活性化を中心に検討を開始し、今年度は非特異的な皮疹を呈したGVHD患者におけるヒトヘルペスウイルス群再活性化の関与について検討を行い、患者皮疹部生検組織を用いてサイトメガロウイルス抗体による染色や各種サイトカインの染色、患者血清の経時的な採取を進め評価を行った。その結果、GVHDの患者皮疹部においてTumor Necrosis Factor、インターロイキン(IL)-6、IL-17が上昇し、その結果M1マクロファージが増殖して炎症反応を増強している基礎データの獲得に成功した。ヒト検体のデータを基にマクロファージの局在や分化の解析を継続することも重要目的の一つとして考えている。マウスGVHDモデルとして異型のマウスに骨髄細胞や脾細胞を投与する骨髄移植後マウスが従来用いられているが、体重減少・皮膚症状の出現についても系の立ち上げに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29・30年度は、GVHDやDIHS患者の重症度や治療の有無とウイルス再活性化の関連について多変量的な視点で評価し、個々の症例について詳細に解析することを目的としていた。当該症例の患者数想定よりも少なく、マウスモデルの基礎となる解析がやや不十分である。マウスGVHDモデルについては概ね順調に経過しているが、今後マウス個体差が生じることも予想されるため、再現性を得られる条件検討と解析を積極的に計画し遂行していく。
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Strategy for Future Research Activity |
GVHDやDIHS患者の当科における症例を増加させていく。 マウスGVHDモデルについては、ウイルス感染細胞浸潤に関与するサイトカイン・ケモカイン産生能や浸潤免疫担当細胞を組織免疫染色やmRNA、cDNAを用いて解析を遂行する。in vitroの系においても潜伏感染細胞の一つであるマクロファージに注目し、マウスサイトメガロウイルスを感染させたマウス腹腔内マクロファージとT細胞・樹状細胞・NKT細胞を共培養することによって、サイトカイン産生能や分化誘導能などについても解明を進める。上述した自然リンパ球(Innate Lymphoid Cells:ILC)の関与の検討については、ILC3細胞に着目し、浸潤の有無とサイトメガロウイルス感染細胞との細胞接着の有無などを中心に病態形成のタイムコースそって解析を進めたい。
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Causes of Carryover |
今年後は、ヒトサンプルの解析を行うと同時に骨髄移植後GVHDモデルマウスの系を立ち上げる要諦であったが、上述したとおり基礎データの評価に遅れが生じたため、骨髄移植後GVHDモデルマウスの実験が予定よりもすくなかった。 次年度以降は実験数を増加させることにより、今年度未使用顎はその経費にあてたいと考えている。
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