2017 Fiscal Year Research-status Report
構造方程式モデリングを用いて統合失調症末梢血の研究成果を統合し、病態解明に繋げる
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17K10281
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
尾關 祐二 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (90303768)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 久彌子 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (70314151)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 統合失調症 / D-セリン / L-セリン / グリシン / グルタミン酸 / グルタミン / 構造方程式モデリング法 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在までに得られている知見を考察を含め次に示す:統合失調症患者46人(男性27人、女性19人、平均年齢54.9±11.4、喫煙18人、平均罹病期間29.2±12.8年, 平均教育年数11.8±2.1年, クロルプロマジン換算抗精神病薬服用量814.7±634.0mg, PANSS得点74.3±16.9[陽性尺度14.5±5.1 陰性尺度23.8±5.7]、BACS-J得点48.7±48.7)。各対象者から昼食前に採血をし、分離された血漿を対象にHPLCにて以下のアミノ酸(Glu, Gln, L-Ser, D-Ser, Gly, His, Asn, Asp, Arg, Thr, Ala, Pro, Met, Val, Leu, Ile)を測定した。また、PANSS・BACS-Jを測定した。統計解析はSPSS Amos ver. 22.0を使用した。解析の結果すべての因子を含むパス図はモデルが不適格であった(CFI: comparative fit index=0.41、通常0.9以上が求められる)。因子をGlu, Gln, L-Ser, D-Ser, Glyのみとしたときにモデルは適切であった。教育年数および罹病期間もモデルには組み込めなかった。BACS-Jは年齢(p<0.01)及びGln濃度(p=0.37)と関連がみられた。PANSS得点とアミノ酸に関係はなく、陽性尺度および陰性尺度は共にGly濃度と有意な関係が認められた(各々p=0.12、p<0.01)。モデルのCFIはすべて0.92と妥当であった。今回の結果は、Glyと臨床症状、Glnと認知機能に何らかの本質的な関係があることを示しているのかもしれない。しかし今回検討されていない物質もあるなど、検討が必要な点が残されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は主に検体の収集を行うとともに、各種物質濃度の測定を並行して行う予定としていた。検体の収集は順調に進行して、統合失調症患者100名、健常被験者100名を超えている。患者に対してはPositive and Negative Syndrome Scale: PANSSにて臨床症状を、Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia: BACSにて認知機能を測定している。予定をしていた各種物質の血中濃度測定に関しては、High performance liquid chromatography (HPLC)やElectro-chemiluminescence immunoassay (ECLIA)法を用いており、すでに手技が確立している。一部対象者についてはすでに血中濃度測定が終了しており現在も継続中である(測定をしている物質:グルタミン酸、グルタミン、L-セリン、D-セリン、グリシン、メチオニン、ホモシステイン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、アルギニン、プロリン、ヒスチジン、ビタミンB12、葉酸、スフィンゴ脂質)。尚一部結果を用いてすでに測定された物質間の関係性をAmos ver.22.0を用いて構造方程式モデリング法(SEM)にて解析し(内服内容、年齢、性別、罹病期間、喫煙習慣を外生因子として加えることで補正)、一定の結果を得ている。さらには平成30年度に施行予定としていた一部遺伝子のリシークエンスやmRNA発現量測定をすでに開始しており、結果の一部を第39回日本生物学的精神医学会・第47回日本神経精神薬理学会 合同年会にて報告している。こうした点はすでに予定を先取りしているとも言え、全体として予定通りに研究が進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
構造方程式モデリング法(SEM)によって健常者で有意な関係があって統合失調症では有意な関係が無い反応経路が見つかれば、その経路に関連する酵素やその酵素の発現・機能調節に関連するタンパクや補酵素などをデータベースなどで特定し、それらの遺伝情報(DNA配列やメチル化パターンなど)などを解析する。具体的には下記手法を予定しておりすでに一部は開始している。 ●遺伝子情報の収集のための実験:・遺伝子配列に関してはコーディング部分やプロモーター部位に関連する部分はリシークエンスを行う遺伝子配列を対象者ごとに決定する。リシークエンスには確実性や効率性を求めて、次世代シークエンサーであるサーモフィッシャーサイエンス社のIon PGE及びIon Protonを使用する。・mRNA発現量は定量的PCR法を用delta-deltaCt法を用いる。プローブはApplied Biosystems社の既製品を用る。・メチレーションパターンの決定はパイロシークエンス法を用いる。なお、実験機器は本施設にすでに導入されている。 ●実験結果の解析: 数学的解析で得られた結果を説明するような遺伝子配列やDNAメチル化の状態などを求めると共にmRNA発現量に関しても独立に健常者と評価することで状況を総合的に観察する。評価の際には患者群全体のみならず各個人や小集団で特定の問題点がないかも検討する。こうして得られた情報は統合失調症の病態につながる情報と考えられ、下記の展望に繋げてゆく。臨床症状との関連に関しても検討を行い、これまでの報告されている生物学的な指標と臨床症状との関連を俯瞰的に評価する、こうして得られた情報も最終的には下記のような発展過程へと還元し、疾患克服へつなげてゆく。
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Causes of Carryover |
当初計画では平成29年度にDNAやmRNA、血漿などを患者、健常者より採取して、それら検体のうちDNAを用いて平成30年度にIon PGMを用いてリシークエンスする予定であった。しかし当初計画よりも検体収集が順調に進行したことから、予定を早めて平成29年度中にリシークエンスを開始した。そのため平成30年度支出予定であったリシークエンスのための試薬購入が必要となり、前倒し支払い請求を行った。最終的にはこうした実験も予定通り進行したことから、予定額をほぼ消費したものの、予測と消費のずれが多少認められたことから、わずかに予算が残った(予支出予想額の約2.7%)。次年度も引き続きリシークエンスを行うことから、本年度に残された金額は次年度に同じ目的で使用することとした。
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Research Products
(1 results)