2017 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of behavior and monoaminergic metabolisim of CNS (central nervous system) of mouse model expressing impulsive behaviors.
Project/Area Number |
17K10285
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
川嵜 弘詔 福岡大学, 医学部, 教授 (50224762)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | cAMP-GEFII / 細胞内情報伝達系 / 衝動性制御 / ノックアウトマウス / 行動解析 / マイクロダイヤリシス / モノアミン |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは,我々が同定したcAMP-GEFIIの中枢神経における機能解析を行うため,cAMP-GEFII ノックアウト(KO)マウス(CG2-KO マウス)を作製した.本CG2-KO マウスは,種々の行動解析の結果,衝動性制御不全モデルマウスとなる可能性が示唆された(2015, Kobayashi et al). 衝動性制御不全は,種々の精神疾患において共通に見られ,衝動性を引き起こす脳内の責任部位としては, 眼窩面皮質,側坐核などが報告されており,また,衝動性制御不全とセロトニンやドーパミンなどのモノアミン系神経伝達物質の機能および代謝異常の関連も示唆されている.本研究では,CG2-KOマウスの行動解析により,衝動性制御における脳部位とモノアミン動態の関連を明らかにし,衝動性の抑制回路機構を解明することを目的とした. CG2-KOマウスは連携研究者である理研・糸原重美,小林祐樹により作成され研究が進められてきたが,本研究では福岡大学医学部精神医学教室においてCG2-KOマウスを対象とした脳内モノアミンとその代謝産物を経時的に行動解析と並行して測定することを計画している.しかし,本研究開始時には我々の実験室では生体マウスを取り扱える状態になっておらず,また,遺伝子改変マウスの受け入れ態勢も充分では無かったため,平成29年度は実験室の整備などを中心に進めた.具体的には,連携研究者である後藤玲央の協力のもと,我々の使用していた一般的な生化学実験室に動物の逃走経路の封鎖,ネズミ返しの設置,室内の殺菌設備,清掃用消耗品の準備を進め,福岡大学よりP1A実験室としての承認を得た.また,糸原,小林との連携のもとCG2-KOマウスの雄個体の移送を行い,凍結精子の保存に至った.このように,平成30年度の目標であった実験室の整備については滞りなく完了した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書では平成29年度中は行動解析と並行しin vivo 微少透析膜法(マイクロダイヤリシス法)によるモノアミンの測定および細胞種特異的な条件変異KO マウスの行動解析を進めることを予定していた.申請者は連携研究者である糸原,小林とともにCG2-KO マウスにおいてOpen Field 課題と5CSRTT を行っており,行動解析に関する実験条件はすでに決定している.本研究ではこれらの行動解析と並行し経時的な脳内モノアミン動態の測定を行う. しかし,前項で記述したように本研究開始時には我々の実験室では生体マウスを取り扱える状態になっておらず,また,遺伝子改変マウスの受け入れ態勢も充分では無かった.そこで,平成29年度は連携研究者である後藤玲央の協力のもと,我々の使用していた一般的な生化学実験室に動物の逃走経路の封鎖,ネズミ返しの設置,室内の殺菌設備,清掃用消耗品の設置を行い,P1A実験室としての承認を得た.また,糸原,小林との連携のもとCG2-KOマウスの雄個体の移送を行い,凍結精子の作成・保存を行った.このように,平成30年度の目標であった実験室の整備については滞りなく完了した.また,マイクロダイヤリシスを行う上で予想されるトラブルはHPLCの調整不足や不調に起因するものも多いため,実験室への生体マウスの持ち込みは許可されていなかったが,他の実験において行動解析後に摘出を行ったラット脳サンプルを使いHPLCの調整を行った.その結果,我々の実験室においても安定したHPLCの測定が行える条件が整った. 以上のように,平成30年度には速やかに実験を進める体制が整いつつあることから,本研究は概ね順調に推移しているものと判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の活動により,マイクロダイヤリシス法により経時的に脳局所モノアミン動態を測定する環境が整い,HPLCの安定稼働も確認することができた,またCG2-KOマウスの移送も完了した.平成30年度前半は,凍結精子として保存されているCG2-KOマウスの再生とコロニーの拡大を行い,実験に必要な数を安定して入手できる環境を整える.CG2-KOマウスのコロニーが立ち上げり生体マウスの安定供給が可能になるまでの間は,通常マウスを使いマイクロダイヤリシスの安定稼働の実現を目指す. 最初の解析対象は,前述の理由に加え脳に占める体積が大きいため他の領域にくらべマイクロダイヤリシスのプローブを挿入しやすいことから線条体と設定しているが,候補としては衝動性制御の責任部位と示唆されている眼窩面皮質,側坐核や,cAMP-GEFII 遺伝子が強く発現している皮質,海馬,線条体,手綱核,小脳などが考えられる.実験の進捗に合わせ随時,新たな領域の測定を進める. 本研究では,我々が連携研究者とともに準備しているcAMP-GEF II floxed マウスを元に,cAMP-GEFII条件変異KO(条件変異CG2-KO)マウスを作製し,多動や衝動性制御の責任領域を明らかにしてゆくことも視野に入れている.前述のCG2-KOマウスを用いた行動解析との同時マイクロダイヤリシス実験は平成30年度後半までに安定して稼働することを目指しており,cAMP-GEFII条件変異KOマウスを用いた実験はその次の研究段階として設定している. 過去に我々の行った研究では,皮質興奮性神経細胞のcAMP-GEF II が衝動的な反応制御に関わることが示唆されている.本研究ではこれらの条件変異KO マウスの行動解析を行うことによってcAMP-GEFII が衝動性制御を担っている脳領域と細胞種を明らかにする.
|