2017 Fiscal Year Research-status Report
Long term follow-up study of persons with autism spectrum disorders detected in the incidence study of the specified birth cohort
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17K10323
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
本田 秀夫 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 准教授 (20521298)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 長期追跡 / 成人期 / 発生率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,特定の出生コホートを対象とした自閉スペクトラム症(ASD)の発生率調査で悉皆的に把握された症例278名の長期追跡を行い,成人期における心理社会的転帰を調査することである。これらの調査対象に対して,平成29年度は大きく2つの調査を行った。 まず,調査対象の診療録から幼児期から最終受診日までの経過を調べ,長期追跡に関連する全ての情報を所定の調査用紙に記録し,さらに集計や統計解析を行うためにインターネットにつながっていない本研究専用のパソコンに情報入力した。調査対象278名のうち,幼児期から20歳以降まで継続的に診療された診療録が残っていたのは168名であり,これら全てについてパソコン入力が完了した。また,残り110名のうち95名は残っていた診療録の所在を確認し,連絡先や診療が中断した経過など一部の情報をパソコンに入力した。 次に,前述の研究対象278名のうち148名に対して研究参加の依頼の電話を行った。連絡がとれた105名中96名の家族に対して書面で研究の趣旨を説明し,承諾を得て面接による調査を行った。面接は平均160分程度であり,本研究のために契約した調査員(心理士)がこれを2回に分けて行った(1回の面接時間は平均80分程度)。面接調査内容は,VinelandⅡ適応行動尺度、PARS(親面接式ASD評定尺度),ABC-J(異常行動チェックリスト日本語版),および生活にかんする調査票である。2名の調査員が面接記録を互いにダブルチェックした。調査記録は鍵のかかる部屋の中のキャビネットで保管し,外部に漏洩しないよう厳重に管理を行っている。面接調査で得られた情報は,本研究専用のパソコンに順次入力し,これまでに66名の入力が完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の平成29年度研究実施計画は,まず初めに研究対象278名全員の診療録から所定の調査用紙に記録として抜き出すことであった。しかし,実際に調査に着手すると,診療録を調べて調査用紙を作成した症例から順に面接を行っていく方が効率が良いことがわかったため,調査用紙の作成と面接を同時並行に進めていく方針をとることとした。結果として,全体の1/3に対して調査用紙の作成と面接調査が完了した。研究対象の中には,連絡先不明などの理由で面接調査が遂行できない症例もいると思われるため,目的とする調査が十分に完了できるペースで進捗しているといえる。 調査内容についても順調にデータが集約できている。たとえば,面接を実施しパソコン入力まで完了した66名について,国際的によく用いられるHowlin(2004)の適応尺度を用いると,成人期に良好な転帰を示したのは20名(全体の30%)に相当し,それなりの転帰21名(32%),不良な転帰25名(38%)とほぼ同等の割合であった。まだ研究途中段階とはいえ,この結果は当初の仮説と矛盾しないものであり,研究デザインの長所を生かして狙い通りの良質なデータが蓄積されていることを伺わせるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進にかんしては,大きく2点あげられる。1つは,平成29年度に行ってきた面接調査を計画的に進めていくことである。現在のペースで面接調査が進められれば,平成30年度のうちに調査対象全員(278名)に研究参加の依頼の連絡を試みることができる可能性もある。ただし,今後は,診療が中断して現在の連絡先が把握できていないケースに対して過去の診療録をもとに依頼の電話を入れることが多くなるため,今年度よりも面接調査のペースが遅くなる可能性がある。 2つ目は,これまで得られた面接情報等をパソコンに入力,集計していく作業である。1名につき20年以上にわたる発達や生活面に関わる膨大なデータがあり,それを研究の目的にそって整理していく必要がある。なお,これらの作業過程においては,常に個人情報の扱いに細心の注意を払うことを心がける。
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Causes of Carryover |
平成29年度は,診療録から調査用紙への記録作業と面接調査を平行して進めていく方針に途中から変更した。その検討に若干の時間を要したため,次年度使用額が生じた。平成30年度は引き続き平成29年度後半と同じ方針で本格的に調査を進め,さらにパソコン入力と集計を行う予定であることから,作業を行う人件費として次年度使用額を充てる予定である。
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Research Products
(6 results)