2019 Fiscal Year Research-status Report
注意の切替え機能に着目したASDの柔軟性低下に関わる脳神経メカニズムの解明
Project/Area Number |
17K10326
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鄭 志誠 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (00621575)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤野 純也 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 講師 (90783340)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 注意切り替え / 柔軟性 / 社会性 / 共感 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、健常群23名を対象に、柔軟性を計測した行動データ(Wisconsin Card Association Test: WCAT)と、共感を喚起するビデオ課題をMRIの撮像中に用いて採取した脳画像データの2つを用いて行った実験が、論文化された (Tei et al., PNAS, 2020). 本論文では、実験計画当初の仮説通り、注意の切り替え能力が低い被験者ほど、社会的な適応能力が低いという結果を報告している。この研究は、今後ASD群にも適用し、健常群との比較を行う事により、さらに有用な知見を得られるものと期待される。
本研究では、被験者に、歌唱が不得意な人たちが、のど自慢大会で恥をかいているビデオ映像を視聴してもらった。ここでは、情動的葛藤(ジレンマ)が起こる様に、歌唱が不得意な人たちが、自分の恥ずかしい状況を自覚し、恥ずかしそうに歌っている場面と、自分の音程のズレに気づかず、得意げに歌っている2つの場面を作った。さらに、この刺激映像を視聴する最中に機能的MRIを撮像して、被験者の脳活動も推定した。この結果、共感に関わる脳活動に特徴がある事がわかった。ここでは、日常生活において、柔軟に状況が理解できない人ほど、共感の中でも、「他者の感じる気持ちを自分の感覚として感じて、他者と同じ感情を共有する」、感情的共感に関わる脳活動が高く(扁桃体)、逆に「相手の立場・感情を周囲の状況を加味して推測し、他者と異なる感情を認識する」、という認知的共感に関わる脳活動は低い(側頭頭頂接合部)、というアンバランスな関係が明らかになった。この結果は、本研究課題の目的である社会的行動や注意の切り替えの柔軟性における、側頭頭頂接合部の役割を支持する結果であった。今後は、当初予定していた、側頭頭頂接合部に対する、経頭蓋磁気刺激を用いた実験を完了させ、論文化を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
被験者との日程調整が比較的多く生じ、データの採取が若干遅れた。これに伴い、解析・論文化にもやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、経頭蓋磁気刺激を用いた実験データの解析、論文の執筆を進める。また学会発表も予定している。この際に得られた新たな知見も論文化の際に、利用することを念頭に入れている。
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Causes of Carryover |
被験者との日程調整が比較的多く生じた為、解析と論文化に若干の遅れがでた。このため、解析ソフトに関わる費用、論文化に伴う英文校正、学会発表に関わる費用が必要となり、これらの支出などを予定している。
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Research Products
(15 results)