2017 Fiscal Year Research-status Report
外傷性脳損傷後遺症の包括的理解-4つの症候群としての検討-
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17K10327
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上田 敬太 京都大学, 医学研究科, 助教 (60573079)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉原 玄一 京都大学, 医学研究科, 助教 (70402261)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高次脳機能障害 / 意識障害 / 脳幹体積 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、現在までに蓄積してきたMRI画像の主に脳幹についての解析を行ってきた。脳損傷群のうち、び漫性軸索損傷群20名と健常被験者60名について、脳幹体積の比較をFreeSufer6.0を用いて比較検討を行った。体積比較を行う際に、intracranial volume(ICV)による補正をどのように行うか検討し、健常被験者から推定されるICVからの脳幹体積推定式を決定し、その数式を用いて、び漫性軸索損傷群について本来の脳幹体積推定値を算出。実際に測定された脳幹体積値との差を脳幹萎縮体積として用いた。現在までのところ、この推定値と臨床上えられた急性期の外傷後健忘期間(duration of post-traumatic amnesia)との相関を検討しているが、全脳幹体積および橋、中脳体積とは、非常に強い相関を認めている。全脳幹体積との相関は、ピアソンのrが-0.578、p-value0.008であり、外傷後の健忘期間が長いほど、慢性期における脳幹体積の萎縮が強いことが分かる。つまり、慢性期における脳幹体積は、少なくとも急性期における意識障害を推測する指標として優れていることが示唆された。また、このような検討をする中で、脳幹体積とGCSスコアとの相関についても検討を行ったが、外傷後健忘期間の結果と比較しおおむね同じ傾向を認めたものの、ピアソンのrについては、より低い値しか得られなかった。このことからは、外傷後健忘期間のような分散の大きい数値を用いるほうがより正確に脳損傷の重症度を検討できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4つの症候群としての理解のうち、脳幹についてはかなり解析が進んでいる。脳梁膨大部の検討についても、課題施行時のfMRIはまだ行えていないが、安静時の解析は進んでいる。局所脳損傷例については、解析はまだ不十分だが、症例数の蓄積は予定通り行っている。7TMRIによる脳表の評価のみまだ画像の蓄積ができていないが、3年計画の1年目としては、おおむね順調に進んでいると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も症例のデータの集積を引き続き行っていく。7TMRIについては、すでに倫理委員会に提出する計画書を作成しており、近々データの集積を始めることが可能となる予定である。また、主に外傷性脳損傷では、経過中にアミロイドやタウ蛋白の沈着が脳内に生じることが最近わかってきており、MRIデータに加え、PETデータについても、滋賀県成人病センター、放射線医学総合研究所との協力を得て、データを蓄積することとした。なお、それにあたりかかる費用は現在のところ被験者への謝金のみであり、研究費用の使用用途として大きな変更は生じない。
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Causes of Carryover |
2017年度については、主にマンパワーなどの関係から、すでに取得したデータを解析することに時間を費やした。結果として、予算を使用する必要がなかった。2018年度には、7TMRIの撮像が開始になり、その解析用の機器なども必要になること、すでに2017年度後半から、新たな被験者に対して同意を取得してきていることから、2017年度分も含めた予算を執行していく予定となっている。
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Research Products
(4 results)