2017 Fiscal Year Research-status Report
老年期精神障害におけるレビー小体病の関与を評価し、予後を追跡する
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17K10331
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大島 悦子 岡山大学, 医学部, 客員研究員 (60583094)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺田 整司 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (20332794)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | レビー小体病 / 嗜銀顆粒病 / 認知症 / 老年期精神障害 / 双極性障害 / うつ病 / 統合失調症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,3つの方向で研究を進めた.第一は,本年度の研究目的にも記載していたように,認知症疾患の病態解明の一環として,様々な臨床症候が,どの脳領域と関連しているのかを探求した.具体的には,今までのデータを整理し,英語の論文として報告した.これは,116人のアルツハイマー型認知症患者を対象として,「こころの理論」障害を検討した研究である.具体的には,「こころの理論」に関する一次の信念課題であるアン・サリー課題を実施した.認知症の程度が軽度の患者を対象としたにも関わらず,厳密に評価すると,アン・サリー課題を通過できたのは37%に過ぎなかった.課題を通過できた群と通過できなかった群を比較すると,前頭葉機能検査に有意な得点差が認められた.「こころの理論」に関する,二次以上の信念課題については,アルツハイマー型認知症で低下することは既に報告されていたが,一次の信念課題においても障害が認められることを明らかにしたのは世界でも初めてである. 第二に,大学病院の精神科病棟への入院患者を対象とした調査を開始した.老年期の患者で,精神障害を呈した患者に詳細な心理検査および画像検査を実施している.現在は症例を蓄積している段階である.少なくない割合の患者が,レビー小体病を背景に有する可能性を示している.今後,そうした患者群の臨床的な特徴を明らかにしていきたい. 第三に,岡山県および近隣の精神科病院における入院患者を対象とした大規模調査について,先行文献の検討や関連施設の先生方との会議などの準備を行った.平成30年度から実施に取り掛かる準備が整ってきた.なお,倫理委員会の承認は既に得ている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度から,研究成果を英語論文として公けにすることが出来た.これは,本研究費を得て,今までのデータを纏めることができ,論文化が可能となったものである. 本年度の研究計画には,大きく3つのテーマを掲げた.1つは,認知症の臨床症候に注目して,その病態解明を目指した研究である.その成果として,アルツハイマー型認知症における「こころの理論」障害を検討した.結果として,認知症が軽度の段階でも,過半数の患者が一次の信念課題を通過できないことを明らかにした.非常に順調に進展していると考えている. 次に,掲げたテーマの第二は,大学病院の精神科病棟に入院した患者を対象とした調査である.研究費を得たことで,少しずつデータの収集を開始することが出来た.順調に進んでいる. さらに,掲げたテーマの第三は,岡山県下の精神科病院に依頼して,高齢の精神疾患患者におけるレビー小体病が疑われる患者の頻度および具体的な症候を調査するものである.これについては,現在,少しずつ研究開始のための準備を進めている処であり,おおむね順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降の研究についても,平成29年度と同じく,3つの柱で進めて行きたいと考えている.第一に,認知症の病態理解を進める研究を継続していく.第二に,大学病院の精神科病棟に入院した高齢患者を対象とした調査を続けていく.心理検査と画像検査を実施し,器質性病変が強く疑われる群と,それ以外の群に分けて比較検討を行う. 第三に,岡山県および近隣における精神科病院の高齢入院患者を対象とした調査を準備していく.平成30年度に倫理委員会に申請し,承認を得て,開始の目途を立てたいと考えている.この調査では,主要な評価項目は,レビー小体病を示唆する各種症候の頻度である.結果として,レビー小体病の可能性が高い症例が,どの程度の頻度で存在しているのか,また,どのような臨床的特徴を呈しているのかを明らかにする.
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Causes of Carryover |
(理由)平成29年度は,病棟での調査を主に実施した.精神科病院を対象とした大規模調査については,開始に向けての準備に多くを費やしたため,使用額は少なかった.
(使用計画)平成30年度は,精神科病院を対象とした大規模調査の開始を予定している.施設間の連絡業務やデータ収集を行う人を雇用する予定である.また,データ管理や入力を実施できる人も雇用する予定であり,繰り越した金額を含めて予算を組んでいる.また,関連する書籍や文献入手のための予算や,学会発表・論文投稿も予定しており,そのための費用や雑費も予算に含めている.
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Research Products
(5 results)