2018 Fiscal Year Research-status Report
放射線治療にともなう心血管疾患の分子病態の解明と予知-DNA損傷の視点から
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17K10449
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
石田 隆史 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (40346482)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 万里 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 准教授 (30359898)
鈴木 義行 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (60334116)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | DNA損傷応答 / 放射線治療 / 心血管病 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年悪性腫瘍の診断と治療が発達し、患者の予後が著しく改善した。このため治療の副作用も注目されるようになった。放射線治療による血管病変はその代表的かつ重大な事象である。特に頭頸部がんに対する放射線治療により、頸動脈の狭窄および脳卒中のリスクが増加することが知られている。頭頸部がんに対する放射線治療による血管病変には、通常の動脈硬化病変と同じ点と相違する点が混在しており、その発症の分子メカニズムには未だ不明な点が多く残されている。本研究はDNA損傷という切り口から放射線治療による動脈硬化病変増悪の分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。放射線治療を受ける頭頸部ガン患者より採血をおこない、単核球を分離し、DNA二本鎖切断のマーカーとしてγH2AXを、染色体異常の指標として二動原体染色体を定量した。放射線治療前に比して、治療後1細胞あたりγH2AXのフォーカス数および二動原体染色体数は有意に増加した。興味深いことにγH2AXと二動原体染色体の増加量には相関は見られなかった。これは二本鎖切断はとりあえず速やかに修復されるが誤った断端の再結合は認識されないのに対して、二動原体染色体はDNA修復のエラーも反映されていることなどが原因として考えられる。同時に、炎症性サイトカインや好中球やマクロファージに対するケモカイン、inflammasomeの構成分子などのmRNAの発現も増加した。頭頚部がん患者の頸動脈エコーは放射線治療前において、プラークが多く認められた。放射線治療開始1ヶ月後には、明らかな変化は現段階では見られていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の対象に該当する症例が予想に比してやや少ないこと、DICの解析にやや時間を要することなどからやや予定より遅れている。一方、心臓カテーテル検査やCT撮影時における低線量被ばくの生物学的影響など医療放射線被ばくの影響を総合的に検討しており、これらの研究で得られた知見を相互に応用し、効率的に解析を進めている。後者は共同研究ながらすでに発表された。
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Strategy for Future Research Activity |
症例を増やしつつ、治療開始後3、6、12ヶ月後のDNA損傷のデータ、血管の生理学的、形態学的データを蓄積していく予定である。本研究のように、実臨床のサンプル、データを用いて放射線治療のDNA損傷、遺伝子発現、血管機能・形態におよぼす影響を検討した研究は貴重であると考え今後も解析を続けていく。
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Causes of Carryover |
DNA損傷の解析の遅れにより生じたものである。次年度に上記の用途で使用する予定である。
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Research Products
(14 results)