2019 Fiscal Year Research-status Report
確率論的LQモデルによる放射線治療効果予測法の研究
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17K10464
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鬼丸 力也 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (80374461)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 放射線治療 / 不均一線量分布 / 局所制御率 / シミュレーション / 乱数 |
Outline of Annual Research Achievements |
定位放射線治療では不均一線量分布で治療され、局所制御率を計算する際に複雑な計算が必要であった。不均一線量分布を同一線量分布の集団と捉えなおし、各集団での放射線照射後の生存細胞数を乱数を用いたコンピューターシミュレーションで求め、腫瘍全体の生存細胞数を数え上げるという単純なアルゴリズムにより、不均一線量分布であってもTCPが計算できることが明らかとなった。具体的には以下の方法で局所制御率を計算した。 不均一線量分布により照射後生存確率(=p)が腫瘍内で不均一に分布するものとした。照射後の細胞の生死は成功確率pによるベルヌーイ試行としN個の細胞に照射後の生存細胞数は母数(N, p)の二項分布に従うとしてシミュレーションを行った。腫瘍を複数の領域に分割し、各領域の照射後生存確率と腫瘍細胞数から治療後の生存細胞数を求め、それぞれを合計して局所制御率を算出した。均一線量分布の局所制御率を正しく算出できるか確認するために、TCPによる局所制御率との比較を行った。半径1.5cmの球状腫瘍において中心部に半径1mmの球状腫瘍、その周囲に厚さ2mmの卵殻構造を7層想定した。各領域の体積を求め、腫瘍細胞密度を10^8個/cm^3としてシミュレーションを行い各領域の生存細胞数を合計し局所制御率を算出した。 均一線量分布とした場合の局所制御率はTCPと良く一致した。次に半径1.5cmの球状腫瘍の最外層のpを0.5とし、内側のpを0.05ずつ低下(相当する線量を増加)させ33回照射した場合の局所制御率を計算したところ94.3%であった。腫瘍内がp=0.5相当線量で均一分布していたとすると、33回照射後の局所制御率は84.9%であった。4回照射の場合、p=0.0032の均一分布では局所制御率86.4%、内側卵殻構造のpを0.0002ずつ下げた場合の局所制御率は89.6%であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
局所制御に影響を与える放射線照射後の細胞集団の生存率の平均値と分散の関係が複雑なことが示唆された。 現代の放射線治療で重要な不均一線量分布におけるTCPを単純な仮定で計算することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
不均一線量分布における局所制御率を計算することが可能となった。この局所制御率が実際の臨床データと整合性があるか検討する必要がある。また、腫瘍の照射線量に対する生存確率を示すモデルであるLQ modelのパラメーターを確率的プログラミングの手法を用いて推定することも可能であると思われる。ヒトの体内にある実際の腫瘍のLQ modelのパラメーターを正確に推定することで、適切な放射線照射の分割方法が明らかになり、放射線治療の成績向上につながる可能性がある。
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Causes of Carryover |
論文投稿を行ったが、掲載料が30万円ほどの予定である。3月現在review中で、結果が判明せず、次年度に論文投稿を行うため次年度使用額が生じた。 次年度に論文発表を行う計画である。
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