2017 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアダイナミクスが細胞の放射線感受性に与える影響とその分子基盤の解明
Project/Area Number |
17K10465
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山盛 徹 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (00512675)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / ミトコンドリアダイナミクス / 放射線 / 細胞死 / Drp1 / Fis1 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ミトコンドリア形態の変化が細胞のストレス応答に大きな影響を与えていることが明らかになりつつあるものの、細胞の放射線応答との関連についてはこれまでほとんど検討されていない。申請者は、“ミトコンドリアダイナミクス”と呼ばれるミトコンドリア形態調節機構が、細胞の放射線感受性ならびに放射線による細胞死の誘導に寄与しているのではないかと考え、本研究によりこの仮説の検証を行った。 マウス乳癌由来EMT6細胞において、ミトコンドリア分裂調節タンパク質であるDrp1およびFis1、ミトコンドリア融合調節タンパク質であるMfn2およびOpa1の発現をshRNAにより安定的に抑制したノックダウン(KD)株を作出した。それぞれの株においてミトコンドリア形態を観察したところ、Drp1およびFis1 KD株では明らかにミトコンドリア形態が伸張し、逆にMfn2およびOpa1 KD株では短く断片化したミトコンドリア形態を示した。これらの細胞の放射線感受性をコロニー形成法により評価したところ、Drp1およびFis1 KD株では放射線感受性の低下が観察された一方で、Mfn2およびOpa1 KD株はコントロール細胞と同程度の放射線感受性を示した。この放射線感受性低下の原因を明らかにするため、細胞分裂異常に伴う細胞死である分裂期崩壊に着目し検討を行った。その結果、X線照射後に誘導される分裂期崩壊が、Drp1およびFis1のKDにより有意に減少した。したがって、放射線照射後に生じる分裂期崩壊が低下することが、これらの分子のKDによる放射線感受性の減少に寄与している可能性が示唆された。 本研究の結果、計画立案当初の仮説を支持する結果が得られた。このことは、ミトコンドリアダイナミクスを標的としたがん放射線治療の改善や新規併用療法の開発など、今後の新たながん治療戦略開発への足がかりとなることが期待される。
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