2017 Fiscal Year Research-status Report
がん細胞の低酸素応答と放射線抵抗性を担う新規遺伝子の探索; 放射線増感を見据えて
Project/Area Number |
17K10474
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森鳰 章代 京都大学, 放射線生物研究センター, 研究員 (20722648)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 稔 京都大学, 放射線生物研究センター, 特定研究員 (40644894)
原田 浩 京都大学, 放射線生物研究センター, 教授 (80362531)
子安 翔 京都大学, 放射線生物研究センター, 研究員 (80781913)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | がん / 放射線 / 低酸素 / 放射線抵抗壊死 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵臓がん組織は、他の悪性腫瘍組織と比較して“低酸素領域”と“がん間質線維芽細胞”に富むことを特徴としている。前者ではhypoxia-inducible factor 1(HIF-1)ががん細胞の低酸素適応応答を惹起することで、後者ではヘッジホッグシグナル伝達経路ががん間質線維芽細胞の増殖を促進することで、腫瘍の悪性形質と放射線治療抵抗性が誘導されることが報告されているが、両者を結ぶメカニズムとその機能には不明な点が多い。本研究では、膵臓がん細胞株を低酸素条件下で培養した場合にヘッジホッグシグナル伝達経路のリガンド蛋白質(Sonic hedgehog protein:SHH蛋白質)の細胞外分泌量が増加するという予備的知見を根拠に、『HIF-1が膵臓がん細胞の分泌するSHH蛋白質量を増加させ、がん間質線維芽細胞の増殖をヘッジホッグシグナル伝達経路依存的に促進し、膵臓がん特有の微小環境を形成している』との仮説を立て、以下の研究を行った。 低酸素環境下の膵臓がん細胞において、SHHの発現量の増加に加えて、SHH蛋白質の細胞外分泌効率の亢進もまたHIF-1に依存していることを示した。加えて、分泌量の増加したSHH蛋白質が、パラクライン的にがん間質線維芽細胞のヘッジホッグ経路を活性化し、その増殖を促進することも示した。具体的には、抗HIF-1α抗体で共沈降してくるSHHプロモーターを定量的RT-PCRで解析することにより、HIF-1αタンパク質がSHHのプロモーター領域に結合していることを明らかにした。また、膵臓がん細胞においてHIF-1の主要制御サブユニット(HIF-1α)をノックダウンした時に、低酸素刺激によるSHH発現量の上昇のみならず細胞外分泌効率の上昇も抑制されることを見出した。さらに、低酸素環境下で分泌量が増加した膵臓がん細胞由来のSHHタンパク質が、がん間質線維芽細胞のヘッジホッグ経路の活性を促進し、細胞増殖を加速させることを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
既にがんの放射線抵抗性に係わる遺伝子ネットワークを同定し、細胞培養を対象にした実験のみならず、腫瘍組織レベルの研究にも着手しているから。
|
Strategy for Future Research Activity |
HIF-1-SHH経路に着目した研究をさらに発展させるとともに、現在新たに同定した新規遺伝子ネットワークの作用機序と機能についても解析を進めてゆく。
|
Causes of Carryover |
最も経費の掛かると予測された遺伝子改変マウスを用いたインビボ実験を良く年に実施することとしたため。ただし、安価に実施できる研究を先んじて実施したため、研究計画全体は予定通りにおおむね順調に進捗している。
|