2017 Fiscal Year Research-status Report
ホウ素中性子捕捉療法に用いるリアルタイムパルス中性子ビームモニタシステムの開発
Project/Area Number |
17K10491
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
小池 貴久 杏林大学, 保健学部, 准教授 (40326955)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇野 彰二 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (70183019)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ホウ素中性子捕捉療法 / BNCT / ビームモニタ / ガス電子増幅器 / GEM / LTCC-GEM |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)のパルス中性子ビーム照射場の品質保証を目的として、これまでの研究で得られた中性子に感度を持つ検出器要素技術を応用し(ボロンカソード電極とガス電子増幅器:GEM)、リアルタイムパルス中性子ビームモニタシステムの開発を進めている。 今年度の研究として、BNCTの中性子照射場を乱すことのない中性子コンバータの設定が重要であることから、カソード電極のボロン蒸着厚の最適化をコンピュータシミュレーションにより行った。加えて、BNCTで用いる中性子照射エネルギー領域を持つ理化学研究所の小型中性子源システム(RANS)を使用した照射試験により、これまでの研究で製作したものを大幅な仕様変更することなく適用できることが確認できた。また、ビームモニタとして要求される検出器の長期安定性を高めるための新たな試みとして、近年開発された、低温焼成セラミックスを用いたGEM(優加工性、優電極形成:LTCC-GEM)を組み込んだ検出器を構成し試験を行った。一般的に用いられている有機材料を用いたGEMは、使用中に発生する放電により電極間が短絡することが起こりやすく耐久性に問題があったが、既存のアーク放電耐性に特化したテフロンGEM(難加工性、難電極形成、高価)と同等の性能を達成できることが実証され、検出器の長期安定性を確保する目途が立った。 使用する検出器の基本構造や信号処理システムの見直しについては、検出器ガスフローシステムの流出入経路を改良し、短時間での検出器カス置換が可能となった。また、2日間程度であれば、ガス置換を行うことなく検出器の使用が可能であることも確認できた(封切りでの使用)。測定エレクトロニクスに関しては、現在のところBNCT用ビームモニタの要求性能に対して、2次元画像、中性子エネルギー分布の取得において、大幅な仕様変更を必要としないことが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中性子照射試験を早い時期に行うことができたおかげで、BNCT用ビームモニタとしての要求仕様に対して、これまで研究を進めてきた検出器システムの適用、改良点等を明らかにすることができた。また、動作安定性、耐久性の面で、新規に使用したLTCC-GEMの特性が本研究を推進する上で有用であることを示されたことは特筆する点である。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに検出器に組み込んだLTCC-GEMは、アーク放電耐性は十分であることが示されたが、それでも放電の発生頻度は決して少なくないため、できる限り放電を抑えた形でデータ収集を行えるような改良が必要であると考えている。幸いにもこのLTCC-GEMの開発グループと共同でGEMの改良を検討する機会が得られ、今年度中に試験することになっている。一方で、この放電の原因が中性子ビームライン(ビームの品質)に起因するものなのか、検出器構成に依存するものなのか明確には特定できていないので、この点についても精査する必要がある。 次年度は複数の施設(RANS、神戸大学、北海道大学)で中性子照射試験を実施できる見込みであり、実際のBNCTビームラインで想定される高線量場、多様な中性子エネルギーが混在した場における動作についても、検出器の内部構成の見直し(GEMの増倍率の検討、多段化を行い1段当たりの増幅率を抑えるなど)、安定動作させるための検出器設定、データ処理の工夫・改良を加えていく予定である。可能で有れば、実際のBNCT施設でも今年度中に中性子照射試験を実施したいと考えている。
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Causes of Carryover |
消耗品の購入(検出器ガス)が抑えられたことと、当初予定していた試験を近隣の研究施設で実施できたことにより旅費の支出が抑えられたため、次年度使用額が生じた。次年度は、申請時に計画していた中性子照射試験を別の施設でも実施できる見込みであるので、その費用に充当したい。
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