2018 Fiscal Year Research-status Report
抗原性を消失させた肝細胞シート移植による免疫寛容導入の試み
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17K10516
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
高槻 光寿 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (80380939)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 裕明 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (40374673)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞シート / 組織適合性抗原 / 肝細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
背景:臓器移植や組織移植においては拒絶反応の制御が必要となる。拒絶反応のひとつである細胞性拒絶は、主要組織適合抗原(major histocompatibility complex:MHC)が標的となる。現在は、移植後に免疫抑制剤を内服することで拒絶反応を制御しているが、免疫抑制剤の長期内服は、過剰な免疫抑制による感染症や悪性腫瘍、薬剤性腎障害などの副作用が問題となる。そこで、免疫抑制剤を内服することなく拒絶を回避するために、抗原であるドナー細胞のMHC発現の抑制に着目した。 また、腫瘍免疫の研究において、効率的な動物モデルを作製する際にも抗原性が問題となり、MHC発現の抑制は有用であると考えた。 目的:肝細胞表面のMHC分子発現を抑制した肝細胞/肝癌細胞シートを作製する。 方法:MHC分子発現を抑制するためのゲノム編集は、CRISPR/Cas9システムを用いて行い、肝細胞株(HepG2)、さらにヒト初代肝細胞を目的細胞とする。ウイルスベクター法や電気穿孔法などの遺伝子導入方法を行い、MHC発現の抑制を解析し、最適な遺伝子導入方法を検討した。さらにより高純度のMHC抑制細胞を作製し、シート作製を行った。 結果:MHC分子発現抑制のため、β2ミクログロブリン遺伝子に対するガイドRNAを設計し、プラスミド、さらにレンチウイルスベクターを作製した。リポフェクション、電気穿孔法ではMHC発現の抑制は確認できなかったが、ウイルスベクター法においてHepG2、ヒト初代肝細胞ともに約10~15%のMHC発現抑制が確認できた。さらにMHC抑制したHepG2を磁気細胞分離し、MHC抑制細胞を約90%と高純度に回収し、細胞シートを作製することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MHC発現抑制の遺伝子導入法に試行錯誤を重ね、時間を要した。最終的にウイルスベクター法で効率よく導入することが可能となり、予定より大きく遅れることなく進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
MHC発現を抑制した肝細胞を作成することができた。今後、予定どおりこれを細胞シートとして移植する実験へ移行する。MHC発現を抑制することで、アロ反応性を回避できる可能性があり、免疫寛容導入へつながる可能性がある。また、MHC抑制したHepG2シートの移植により効率的な動物モデルの作製による治療法の開発に寄与しうると考える。
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Causes of Carryover |
注文した試薬などの納期が遅れるなどして、実験全体が予定より遅れ、本年度で予算を使用しきれず次年度使用額が生じた。そのため、肝細胞シート移植に必要な試薬の購入に充てる予定である。
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