2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K10540
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
三村 耕作 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90568031)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 乳がん / 癌微小環境 / phospho-STAT1 / PD-L1 / HLA class I / CD8陽性T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
進行乳癌に対する新たな治療戦略の1つとしてImmune Checkpoint Inhibitors(ICIs)を含めた免疫細胞療法が、近年、世界的に注目されている。しかし、腫瘍微小環境にはImmune Checkpointを含めた様々な免疫抑制機構が存在し、特に、T細胞機能不全は免疫細胞療法の効果を著しく損なうと考えられる。本申請研究では、乳癌の腫瘍微小環境におけるT細胞の癌細胞傷害能に対する免疫抑制機構(特に、乳癌細胞のPD-L1発現機構の解明に重点を置く)を詳細に検討し、免疫細胞療法の開発に努める。本研究の成果は、乳癌における、より有効な免疫細胞療法の開発、更には、ICIsのバイオマーカー開発に寄与するものである。 乳癌の腫瘍微小環境におけるT細胞の免疫抑制機構の解明に重点をおき、以下の如く研究を立案した。1.乳癌の手術切除標本を用いて、腫瘍微小環境に浸潤したCD8陽性T細胞の浸潤細胞数とIFN-γ産生の有無、癌細胞におけるPD-L1・HLA class I・ER・PgR・HER2・Ki67の発現程度について評価し、それらの関係について解析。2.ヒト乳癌細胞株を用いて、PD-L1とHLA class I発現機構を解析し、それらがCD8陽性T細胞へ及ぼす影響について検討。 乳癌細胞株を用いた予備実験の結果より、PD-L1とHLA classⅠの発現にはIFN-γを介するJAK-STAT経路が関与していた。本結果を踏まえ乳癌の手術切除標本を用いた免疫染色を施行し、LuminalA subtypeでPD-L1の発現が増強されていること(p = 0.0054)、phospho-STAT1(IFN-γ signaling pathwayの1つ)陽性症例ではPD-L1とHLA class I の発現が有意に増強されていること(各々p=0.003, p=0.004)が証明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初めに、乳癌細胞株を用いて以下の如く予備実験を行った。乳癌細胞株をMAPK阻害剤、PI3K-AKT阻害剤、EGFR/HER2チロシンキナーゼ阻害剤、IFN-γの存在下に培養し、PD-L1とHLA class Iの発現機構をFlow cytometry、Western blotting、Gene expression array analysisで検討した。その結果、IFN-γのみが、JAK-STAT経路を介して、乳癌細胞株におけるPD-L1とHLA classⅠの発現を増強させた。 乳癌細胞株の予備実験結果を踏まえ、術前化学療法が施行されていないStageⅡ、Ⅲの乳癌手術症例111例を対象とし、CD8・PD-L1・HLA class I・ER・PgR・HER2・Ki67・phospho-STAT1の発現程度について免疫染色で評価した。当初は、IFN-γの染色を試みたが評価が困難であり、IFN-γ signaling pathwayの1つであるphospho-STAT1の染色へと変更した。 現在、全症例において免疫染色は終了し、解析中である。現時点での免疫染色の解析結果では、LuminalA subtypeでPD-L1の発現が増強されており(p = 0.0054)、p-STAT1陽性乳癌症例では癌細胞のPD-L1とHLA class I の発現が有意に増強されており(各々p=0.003, p=0.004)、さらに、HLA class I陽性症例では有意にPD-L1の発現が増強されていた(p=0.007)。今後、乳癌細胞側の解析のみならず、腫瘍微小環境に浸潤したCD8陽性T細胞における細胞数・PD-L1発現・p-STAT1発現などの解析も加え、検討を続けていく。
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Strategy for Future Research Activity |
本申請研究の目標である「乳癌腫瘍微小環境におけるT細胞の免疫抑制機構の解明」を目指し、以下の如く研究を推進していく。 ① 乳癌手術症例111例の免疫染色結果について、癌細胞と腫瘍微小環境に浸潤したCD8陽性T細胞の観点から、さらに詳細な検討を行う。 ② 乳癌細胞株を用いた実験(MAPK阻害剤、PI3K-AKT阻害剤、EGFR/HER2チロシンキナーゼ阻害剤、IFN-γを用いた実験系)を複数の乳癌細胞株を用いて継続し、PD-L1とHLA class Iの発現機構の解明に努める。 ③ Cancer Cell Line EncyclopediaとThe Cancer Genome Atlas (TCGA)のデータを使用し、乳癌におけるIFN-γ signatureとPD-L1、STAT1とPD-L1の関連について解析する。 ④ 乳癌細胞のPD-L1とHLA class Iの発現が、CD8陽性T細胞に及ぼす影響、さらに、抗PD-1抗体/抗PD-L1抗体の効果について、ELISpot assayとcalceinを用いたcytotoxic assayで検討する。
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Causes of Carryover |
昨年度は、乳癌手術症例111例の免疫染色とその解析を主に行っていた。今年度からは、複数の乳癌細胞株を用いた実験(MAPK阻害剤、PI3K-AKT阻害剤、EGFR/HER2チロシンキナーゼ阻害剤、IFN-γを用いた実験系)、CD8陽性T細胞を用いた実験(抗PD-1抗体/抗PD-L1抗体を使用し、ELISpot assayとcytotoxic assayを施行)を行う。そのため、抗体・試薬・細胞培養液・ディスポーザブル用品等、昨年度より物品費が掛かる。 また、本研究により得られた成果を国内・海外の学術集会で発表するとともに、主要学術誌へ投稿する予定である。
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Research Products
(6 results)