2018 Fiscal Year Research-status Report
Wnt5aシグナル伝達経路を標的としたER陽性乳癌に対する新規治療法の開発
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17K10549
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
角舎 学行 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 講師 (20609763)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Wnt5a / 乳癌 / シグナル伝達経路 / PI3K |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの我々の研究結果から、(1)Wnt5aの発現はER陽性乳癌において高い悪性度と予後不良と関与している。(2)Wnt5aはALCAMを誘導し乳癌細胞の遊走能を亢進させ、乳癌の悪性度を高めると考える。(3)Wnt5aはER陽性乳癌において悪性度の予測因子、治療ターゲット、そして予後因子として有用である可能性がある、ことが明らかになった。今年度は、Wnt5aの発現を制御するメカニズムを明らかにすることを目的として実験を行った。Wnt5aの発現はER陽性乳癌と非常に関連が深いが、ER陽性乳癌に関連の深いシグナル変異はPI3Kシグナルであり、約40%のER陽性乳癌にはPI3Kの変異が存在する。他のグループからも、PI3Kに変異のある乳癌で発現の上昇していた分子の一つにWnt5aが報告されているため、我々はPI3K変異のあるER陽性乳癌におけるWnt5aの発現を検討した。その結果、免疫染色におけるWnt5a強陽性乳癌とWnt5a陰性乳癌においてPI3K変異に有意な差がなかった。この結果については、現在、免疫染色ではなくWnt5aのmRNAを測定することで、PI3Kとの変異との関連を現在、解析中である。 また、培養細胞を用いた実験では、PI3Kシグナルを刺激するHGFを用いて、Wnt5aの発現の変化を解析中である。Wnt5aが強発現しているMDA-MB175VII細胞や弱発現しているZR75-30細胞をHGFで刺激し、経時的にWnt5aの発現をみているが、Wnt5a発現はわずかに上昇しているという結果が得られている。現在は、細胞内のWnt5a発現だけでなく、メディウム中に放出されるWmnt5aの発現を定量化することを検討している。 Wnt5aの発現を制御するメカニズムを解析することは、Wnt5aが悪性化をコントロールしている乳癌、胃癌など様々な癌種において大事なことであるため、今年度中に解析を終了して治療への応用を検討したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度までの研究で、Wnt5a陽性乳癌の悪性度について明らかになったが、Wnt5a研究の問題点として、(1)免疫染色に用いることが出来るWnt5a抗体が市販されているものには無い、(2)Wnt5a発現を制御するシグナル、分子について、癌特有のものが明らかになっていない、(3)Wnt5aは分泌蛋白なので、周囲の細胞(線維芽細胞など間質の細胞)へ与える影響と自分自身(Wnt5a陽性乳癌細胞そのもの)に与える影響の二つの可能性がある、などが考えられる。(1)については、大阪大学医学部生化学の菊池教授から抗体を供与していただき、乳癌組織の免疫染色を行ったが、今後、乳癌組織での検討になると、再び抗体の精製が必要となる。(2)については、今年度の研究目的であるが、これまではTNFαなど炎症に関与するサイトカインなどが知られているのみであり、癌に関連した分子、特に乳癌などに関連したものがないため、やや研究が難航している。また、(3)にあるように、Wnt5aは分泌蛋白であり、細胞内にも存在すると同時に、刺激によりメディウムにも放出される。これまでは、細胞内のWnt5aをウエスタンブロットで定量していたが、現在はそれに加えてメディウム内のWnt5aを免疫沈降で回収し、定量することを検討している。それにより、細胞内ではWnt5aの量が大きく変動しなくても、メディウム内には多く放出されている可能性があり、現在、候補としているHGFなどで刺激して解析したいと思っている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の問題点は、上記に述べたように(1)細胞内、メディウム内のWnt5aの両方を定量する、(2)蛋白量だけではなくmRNAの定量にする、(3)HGFによる刺激では30分がピークの一過性の刺激となっているため、持続的な刺激のためにはPI3K変異体の強制発現による持続的な刺激が必要ではないのか、などである。(1)(2)については、現在、細胞内のWnt5aはHGF刺激によりわずかに増加するが、想像していた変化よりは著しく少ない。そのためメディウム内のWnt5aの定量を試みている。当面のところ、抗Wnt5a抗体を用いて免疫沈降を行い蛋白量を定量することを考えている。(3)については、Wnt5a変異体のプラスミドを所有している研究室にお願いすることが必要であるが、当面は、HGFによる短期刺激にて研究を行っていきたいと考えている。
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Research Products
(2 results)